『ガールズバンドクライ』音楽アニメの新しい形に? トゲナシトゲアリが声優をする新しさ
ただし、そういう良さを出すためには、演者である理名の歌唱力、つまりは音楽面でのプロフェッショナルとしての技術が必要不可欠だったように思う。初手から“圧倒的にうまい”というのは、仁菜自身がそれだけ人生で言いたかったことを溜め込みながら生きてきたようにも見えた。これから回を追うごとに、バンドとしての演奏のまとまりにも磨きがかかっていくのだろう。普段の性格と堂々とした圧巻のパフォーマンスにはギャップがあるにもかかわらず、“声”は絶妙に地続きなところもリアリティがあって良い。
また『ガールズバンドクライ』の面白いところとして、作品のYouTubeチャンネルの動画も、まるで実在のアーティストのチャンネルのような仕様になっている点が挙げられる。一般的なアニメ作品のYouTubeチャンネルといえば、オリジナルのミニアニメや参加声優によるOP・EDの「歌ってみた・踊ってみた」のショート動画などが多い印象だが、本作では、まずオフィシャルミュージックビデオの数々がずらりと並ぶ。さらにアニメ内のキャラクターが一問一答に答えるなど、まさに実際のリアルな現実世界のアーティストによくあるYouTubeチャンネルの構成になっているのだ。
動画内には「トゲナシトゲアリ」のメンバーだからこそできる内容のコンテンツも多い。『ガールズバンドクライ』第4話では、楽器店を楽しそうに店内を回る仁菜が描かれていたが、島村楽器とコラボしているリアルな動画も。「アニメ『ガールズバンドクライ』楽器屋さんに行ってみた!」では、それぞれのメンバーが楽器店でワンコーラス試し弾きをするところが実際に観ることができる。その他の動画では、Gt.の夕莉本人がギター演奏で『爆ぜて咲く』や『極私的極彩色アンサー』を披露し、演奏のコツを伝授するなど、実際に楽器に触れてきた人だからこその面白いコンテンツが出来上がっている。
こうした従来の専業声優にはなかなか踏み出せなかった試みを可能にしているのが、バンド「トゲナシトゲアリ」の存在とも言えるだろう。現在、多くの声優がアニメの枠にとらわれない自由な表現活動が可能になっている中、新時代を切り開くのは“音楽特化型”の声優なのかもしれない。
■放送情報
『ガールズバンドクライ』
TOKYO MXほかにて、毎週金曜24:30~放送
原作・企画・製作:東映アニメーション
シリーズ構成:花田十輝
音楽プロデューサー:玉井健二
劇伴音楽:田中ユウスケ(agehasprings)
キャラクターデザイン:手島nari
CGディレクター:鄭載薫
シリーズディレクター:酒井和男
キャスト:理名、夕莉、美怜、凪都、朱李
©東映アニメーション
公式サイト:https://girls-band-cry.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/girlsbandcry