『水深ゼロメートルから』は“脳内会議”作品? 山下敦弘監督「感想を書いてくれたら」
映画『水深ゼロメートルから』の完成披露上映会が4月18日に開催され、山下敦弘監督、濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、三浦理奈が舞台挨拶に登壇した。
本作は、スマッシュヒットを記録した映画『アルプススタンドのはしの方』と同様のプロジェクトから生まれた「高校演劇リブート企画」第2弾。高校2年生の夏休みに、水のないプールに特別補習のため呼び出された女子高生たちによる心の葛藤と解放を描く。
2019年に開催された第44回四国地区高等学校演劇研究大会で「文部科学大臣賞(最優秀賞)」を受賞した徳島市立高等学校『水深ゼロメートルから』(原作:中田夢花)を原作とした舞台が、2021年に「劇」小劇場にて上演。そして、映画が5月3日から新宿シネマカリテほかで全国順次公開される。
ココロ役の濵尾、ミク役の仲吉、そしてユイ役の花岡は2021年の舞台に続き、映画でも同じ役を務めた。濵尾は「同じ役を舞台でも映画でも演じることができたのは貴重だなと思いましたし、面白かったし、難しかったです」とコメント。今回の映画での芝居は、舞台とは全く違ったようで、花岡は「舞台はもっとキラキラしていたけど、映画はどこか醒めたような印象があります。普段の仲が良い感じを舞台には持ち込んでいたけれども、映画では初めて会った人たちというテンションを作る必要があったので、それが難しかったです」と明かした。
また、仲吉は「舞台は限られた場所で演じましたが、(映画の撮影では)実際にプールに入ったり、プールサイドで演技をしたので、意外と顔が見えなかったり、声が届かなかったりしたので、ココロのセリフの刺さり方も違いましたし、ミクの届け方も変わりました。キャラクターの性格は変わらないのですが、見せ方や話す間も全然違ったので、新鮮な感じでした」と思いを述べた。
映画版から参加したのが、チヅル役の清田と野球部マネージャーの三浦だ。清田は、初めて脚本を読んだときの印象を「最初に思ったのは“会話劇だな”ということでした。場面転換が少ないのは、舞台の映画化ならではだと思いましたし、当時、現役高校生だった中田さんが書かれた脚本なので、共感しやすい部分も多くて、これはぜひやりたいと思いました」と語った。
一方、三浦は「初めて物語を読ませていただいた時に、水のないプールが舞台というのが、どんな感じなんだろうって。そこで繰り広げられる感情のぶつかり合いが面白いなと思いました」と笑顔で話すが、その水のないプールでの撮影にはいなかったそうで「グラウンドでペットボトルを運んでいました」と苦笑いを浮かべた。
『リンダ リンダ リンダ』や『カラオケ行こ!』など、数々の青春映画を撮ってきた山下監督だが、今作は「女の子たちの話なので、頭では分かるけれども感覚としてはわからないところも多かった」という。それゆえ、「濵尾さんたちに『違和感ない?』とか『今のおかしいよね?』と聞いて、セリフを減らしたりしながら、一緒に作っていきました」と明かし、「女性陣に正解を聞きながら撮影しました」と振り返った。
今作では、体育教師の山本役としてさとうほなみも出演していることから、さとうの印象を聞かれると、仲吉は「とにかく美しくて、肌も白い」と絶賛。濵尾も「ココロが山本先生とバトルシーンがあったのですが、カットがかかった瞬間のほなみさんの顔が本当に美しくて、優しくて、演じている時とのギャップがすごかったです」と同意した。
舞台挨拶の最後には、濵尾は改めて「この作品は観た人の心をゼロメートルから数メートル持ち上げて背中を押してくれる作品だと感じました。観るたびに感じる部分や刺さるキャラクターやシーンが変わってくると思います。何度でもたくさん観ていただけると嬉しいなと思います」とアピール。
仲吉は「みくりちゃんがこの作品は“脳内会議”だとおっしゃっていたんです。いろいろな悩みを持った子たちが、自分なりの伝え方で頑張って葛藤して解消していくのですが、みんなの悩みに共感できる部分があって、確かに脳内会議のようだなと思います。5人のセリフは、心に刺さる、後押ししてくれるようなセリフばかりです。いろいろな機会に何度も見返していただけたらと思っております」とコメント。清田は「人それぞれいろいろな感想を持つかもしれないですが、自分の感想を持つことが映画のテーマの“自分らしさ”につながると思います。どんな感想でも抱いた気持ちを忘れずにいてもらい、そして、またいつか見返したときにどう思うのか考えて、いっぱい愛して欲しいと思います」と思いを語った。
そして、花岡は「この映画を観る時、私は自分の中学生、高校生を思い出しながら観ましたが、今、高校生の方、これからなる方、昔の高校生時代を思い出して観る方、いろいろな視点から観た感想に興味があります。皆さんから観たこの映画がどんなものなのか教えていただけたら嬉しいと思います」と笑顔を見せ、三浦は「山下監督やスタッフの皆さん、キャストの皆さんが愛を込めて作ったこの作品がたくさんの人に届いてくれたら嬉しいなと思います」とメッセージを贈った。
最後に山下監督が「自分の欲が入っていない映画を久々に作れた気がしています。主人公がいないというのも大きいと思いますが、とても清々しい映画です。小さい映画ですが、いろいろな人に届いて欲しいと思っています。感想を書きづらい映画かもしれないですが、感想を書いてくれたら嬉しいです」と呼びかけて、締めくくった。
■公開情報
『水深ゼロメートルから』
5月3日(金)より新宿シネマカリテほか公開
出演:濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、三浦理奈、さとうほなみ
監督:山下敦弘
脚本:中田夢花
原作:中田夢花、村端賢志、徳島市立高等学校演劇部
音楽:澤部渡(スカート)
主題歌:スカート「波のない夏 feat. adieu」(PONYCANYON / IRORI Records)
製作:大熊一成、直井卓俊、久保和明、保坂暁、大高健志
企画:直井卓俊
プロデューサー:寺田悠輔、久保和明
制作プロダクション:レオーネ
製作幹事:ポニーキャニオン
製作:『水深ゼロメートルから』製作委員会
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
©︎『水深ゼロメートルから』製作委員会
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/suishin0m