『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』シリーズ超初心者が観てみた 未見勢には予習が必要?

『100万ドルの五稜星』初心者が観てみた

 それこそが、怪盗キッドの登場だ。真っ白なタキシードにシルクハット、さらには顔が見えないモノクルという、『美少女戦士セーラームーン』で育ったヲタク女子の癖を刺してくる特徴が詰め込まれている謎多き青年。飄々とした振る舞いに紳士の装い……そして何より銃から発射されるのがトランプだなんて、あまりにもおしゃれすぎる。「なんでこの人、前回の作品にもメインで出てこなかったの?」と内心思ったが、ここで出会えてよかった。登場時の楽しげな音楽も、彼の余裕でスマートな盗みのスタイルを強調しているようでいい。

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』

 結局、最後にピンチに陥った平次を颯爽と助けたのも彼だ。私のような初心者から観ると、本作の“実質主人公”は怪盗キッドだったのではないだろうか。ラストの展開の雰囲気から、おそらく既存ファンにとっても本作が怪盗キッドを紐解く重要な作品に位置するであろうことは伝わってきた。しかし、予備知識の少ない私にはそこまで深くついていけなかったのが少々残念だ。これは今後の勉強のしがいがありそうだ。

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』

 そして、予想外だったのが小野大輔の執事役だ。私は『黒執事』の大ファンなのだが、「あのお嬢様と執事は一体何者なのだろう?」と首を傾げつつも、セバスチャンとは異なる小野大輔の“執事ボイス”を聞けてかなり満足だった。さらには、今作では津田健次郎が土方歳三を演じているではないか。津田健次郎×新撰組といえば『薄桜鬼』風間千景役が真っ先に思い浮かぶが、今回は土方役ということで、IFの世界を見ている気分になった。偶然とはいえ、こうした声優とキャラクターの「意外な巡り合わせ」も本作で大きく楽しめたポイントだった。

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』

 こうして無事“コナンで感じる春”を体感してきたわけだが、昨年に引き続き、予備知識のない初心者でもコナンの世界観に引き込まれる魅力は健在だった。ただし、本作でコナンデビューを果たす“未経験者”にとっては最低限の予習が必要な作品であるように感じた。かくいう私も、現在さまざまな考察や解説を観ながら、本作の復習に追われているところだ。しかし、穴を埋めていく時間すらも楽しいと思わせてくれるところが、『名探偵コナン』の魅力なのだろう。この復習の成果を生かすべく、来年の“コナンの季節”を楽しみにしている自分がいる。

■公開情報
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』
全国東宝系にて公開中
原作:青山剛昌
監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン)、山崎和佳奈(毛利蘭)、小山力也(毛利小五郎)、山口勝平(怪盗キッド)、堀川りょう(服部平次)
スペシャルゲスト:大泉洋
主題歌:aiko「相思相愛」(ポニーキャニオン)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:https://www.conan-movie.jp/2024/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/conan_movie
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