『光る君へ』柄本佑の壮絶な泣き顔に込められた父への思い 兼家の死がもたらすもの

『光る君へ』柄本佑の壮絶な泣き顔

 ききょうはまひろの屋敷を訪れた際、自らの志をまひろに打ち明けた。ききょうの勢いとそれに気圧されるまひろのやりとりはコミカルだが、ききょうの言葉に対するまひろの感情の機微を、吉高は繊細な表情で表現する。宮中に女房として出仕したいと願うききょうは、夫を捨て、息子も夫に委ねるつもりだと言った。ききょうの考えにあっけに取られるまひろだが、ききょうは「私は私のために生きたいのです。広く世の中を知り、己のために生きることが他の人の役にも立つような、そんな道を見つけたいのです」と強く語る。ききょうの言葉を受け、まひろを演じる吉高は小さく息を呑んだ。ききょうの志の高さが胸に響くと同時に、自らにそこまでの志はないということを実感したのではないだろうか。

 たねに文字を教えている時、まひろは心の底から楽しそうに見える。けれど、現実は厳しい。たねが屋敷に姿を見せなかったため、まひろはたねの家を訪れる。たねの父は、一生畑を耕して生きていく娘に文字などいらないと言い放つ。たねが楽しそうに文字を書いていたことを思い、まひろが動揺を見せる中、続くたねの父の言葉が、まひろの胸に突き刺さる。

「俺ら、あんたらお偉方の慰みものじゃねえ」

 月を眺めるまひろは物思いに沈んでいた。文字の読み書きができないために人買いに騙され、親と引き離された子の姿を見て、まひろは自らの使命を見出した。けれど、たねの父から、農民として生きる娘を一時のなぐさみにもてあそんでいると怒りをぶつけられ、その使命が揺らいでいる。これまでの物語の中で、吉高は何度か物思いにふける顔を見せているが、第14回で見せた顔は道長を思う顔とは異なり、真剣さが際立っていた。同じ月を眺める道長の「俺は何一つ成していない」という言葉にまひろの横顔が重なる。人の役に立ちたい、けれど何が正しい道なのか。まひろは迷う。道長もまた、道隆の独裁という不穏な空気が立ちこめる中で、真の政とは何かという問題に直面している。

 一筋縄ではいかない局面を2人がそれぞれどう乗り越えていくのか。また演者である吉高と柄本が、まひろと道長の複雑な心境をどのように演じ、見せてくれるのか。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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