『ぶっちぎり?!』で“キャラ萌え”ファン続出! 内海紘子が描く“男の友情”が尊い理由とは

『ぶっちぎり?!』“男の友情”が尊い理由

 内海紘子が監督を務めるTVアニメ『ぶっちぎり?!』の“異色さ”にハマる人が続出している。本作が描くのは『千夜一夜物語』にインスパイアされた現代日本でのヤンキーたちの抗争。だが内海監督ならではの“キャラ萌え”を生み出す手法で、男臭く硬派な従来のヤンキーものとは一味違う『男の友情』が力強く表現されている。

内海紘子が描くキャラクターはカップリングで応援したくなる

『ぶっちぎり?!』

 『ぶっちぎり?!』で初めて内海紘子の世界観に触れたファンには馴染みがないかもしれないが、彼女はアニメ界で一大トレンドを巻き起こした『Free!』や、原作の良さを最大限まで引き出したアニメと評される『BANANA FISH』で知られる監督である。アクションシーンやスポーツの動きも目を引くが、それ以上にキャラクターの心情や感情の機微に重きを置いた“いじらしい”演出をするのが特徴だ。

 例えば『ぶっちぎり?!』のまほろは、荒仁に対して時にキツイ態度をとる。しかし兄を失った真宝に対しては思うところがある様子。第9話で「真宝くんの気持ち、考えたことある?」とまほろが荒仁に迫るシーンは、まほろが兄という存在を通して世界を見つめているという彼女の内面を巧みに表現していた。

『ぶっちぎり?!』

 心情がわかるからこそ、推したくなる。ついカップリングで応援したくなったり、二次創作に手を出したくなったり……。こうした女性ファンに刺さる"内海紘子ワールド"のキャラクターは、一体どのようにして出来上がっているのだろうか。

 そこで、内海紘子が監督を務めた全作品を追ってきた筆者が、なぜ彼女の作品が女性ファンを虜にするのかを紹介したい。

徹底したビジュアルへのこだわり

 内海監督の徹底したキャラクターの掘り下げ方には、2つのアプローチがある。まず1つ目がビジュアルへの徹底したこだわりだ。監督自身が過去の経歴の中で『けいおん!』など京都アニメーション作品の原画を担当していた経験もあり、監督作『SK∞ エスケーエイト』ではキャラクター原案も務めるなど、視覚からわかるキャラらしさへのこだわりは並々ならぬものがある。

『ぶっちぎり?!』

 たとえば『BANANA FISH』では、原作の絵の味をアニメーションの絵として落とし込みつつ、服装は基本的にイチから考えることで、アニメならではの見せ方を追求しているという。(※1)原作の主人公のアッシュ・リンクスはTシャツとGパンにジャケットを羽織るシンプルな服装が多く描かれている。しかし、アニメではそれをそのまま再現するのではなく、現代的でスタイリッシュなファッションにアップデート。80年代のファッションから抜け出した、現代版『BANANA FISH』の世界観を見事に完成させた。

 こうした視覚的な面白さは、『ぶっちぎり?!』にも存分に発揮されている。青と緑のパッと目を引くポップな色使いがふんだんに使われた魅那斗會とシグマスクワッドの抗争や、チャイナ服の要素を取り入れた荒仁の私服……。他のヤンキーアニメには見られない『ぶっちぎり?!』ならではの世界観に、つい胸をときめかせてしまう。

視聴者の心をグッと掴む“いじらしい”演出

『ぶっちぎり?!』

 次に、内海監督のこだわりが光るのが演出だ。『Free!』では、不器用な水泳男子たちが、互いの個性を補い合う姿が、作品の大きな魅力となっている。

 主人公の遙は、クールな佇まいの奥に、水泳への熱い想いを秘めている。しかし寡黙な性格ゆえ、自ら物語を動かすタイプではない。そのため内海監督は、“主人公を主人公にする”ことを意識しながら、遙の反応や表情を常にカメラで追いかけることで、彼の心情を丁寧に捉えていったそうだ。(※2)

『ぶっちぎり?!』

 一方、『ぶっちぎり?!』では、回想シーンで語られる登場人物たちの過去が丁寧に綴られる。一見、表情でストレートに性格がわかりやすいように見えるキャラクターたちが集まっているものの、蓋を開けてみれば、彼らのなかに宿るギャップや意外性を知ることができる。真宝の中に巣食う闇や、幼い荒仁が感じた戦うことから逃げたことへの罪悪感。過去のワンシーンにも一人ひとりの魂が宿っているからこそ、内海監督が紡ぎ出すキャラクターたちは、鮮やかに力強く、観る者の心を掴んで離さない。

『ぶっちぎり?!』

 最終回を控えた今、改めてキャラクターの“内海紘子らしさ”を紐解いていくと腑に落ちるものがあるのではないだろうか。

 ここからは、『ぶっちぎり?!』で人気を集めているキャラクターの魅力を解説していく。

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