『ゴッドランド』に漂う“親密さ”の正体 フリーヌル・パルマソンが明かす撮影のこだわり
アイスランドといえば、何を思い浮かべるだろうか。オーロラ? 火山? ヴァイキング? IKEA……は残念ながらスウェーデンだ。
「北欧」と一括りに扱われる国々には、実は複雑な歴史的背景がある。アイスランドは13世紀にノルウェーの統治下に置かれ、16世紀にはデンマークの植民地となった。意外にも、アイスランドが独立したのは1944年と随分最近のことなのだ。
『ゴッドランド/GODLAND』は、アイスランドがまだデンマーク領だった19世紀を舞台に、デンマーク人の牧師がアイスランドに教会を建てるまでの過酷な旅路を描く。
「デンマーク人とアイスランド人のミスコミュニケーションを描きたかった」というフリーヌル・パルマソン監督に、本作の撮影過程について聞いた。
登場人物は全て役者たちのために書いた「当て書き」
ーー本作の構想はいつ頃からあったのでしょうか?
フリーヌル・パルマソン(以下、パルマソン):アイデアがいつからあったのかははっきりと覚えていませんが、2013年が大きなきっかけになりました。私がまだデンマークに住んでいて、映画学校を卒業したばかりの頃です。デンマーク人とアイスランド人のコミュニケーション、またはミスコミュニケーションについて何か描きたいと思ったんです。
ーー舞台をアイスランド南東部にしたのはなぜですか?
パルマソン:私が今住んでいる環境に近いというのが、一番大きな理由です。私は南東部の出身で、デンマークで映画の勉強をしたあと、家族と一緒に戻ってきたのもこの土地でした。本作はあまり多くの予算があるわけではないので、自分自身がよく知る土地で撮りたいと思ったんです。
ーー犬や馬、羊をはじめ、本作には多くの動物が登場しますが、どのような意図があるのでしょうか?
パルマソン:この映画は、そこに出てくる役者たちのために書いた「当て書き」です。主人公のルーカスは、エリオット(・クロセット・ホーブ)のために書きましたし、ラグナル(イングバール・E・シーグルズソン)もそうです。同時に犬や馬たちも、スタッフや出演者が普段一緒に暮らしている動物たちに出演してもらっています。
ーーなるほど。どうりで馬の扱い方が手慣れていると思いました。
パルマソン:そうなんです。本作に登場するエキストラ、例えば教会の中で走り回っている子どもたちも、私やプロデューサーの子どもだったりするので、とてもホームメイドな作品なんです。
ーースタンダードサイズ(アスペクト比1.33:1)で撮られていることも、親しみを感じさせるのに一役買っていますね。
パルマソン:おっしゃる通りで、自然を大きなスケールで捉えながら、同時に親密な空気感も出したいと考えていたんです。その両方を提供してくれたのが、古くから使われているこのフォーマットでした。横幅の短い画角にすることで、広大な風景の中にいる人物が映えるんです。