『光る君へ』吉高由里子の涙があまりにも心苦しい幕引き まひろに突きつけられた現実

『光る君へ』まひろに突きつけられた現実

 まひろは宣孝(佐々木蔵之介)が感心するような行動力を発揮する一方で、道長を思う言動は純粋で切ない。道長からの文を愛おしそうに撫でる指先や、道長がひそかに為時の屋敷を訪れていたことを知って思わず外へと駆け出し、辺りを見渡すその面持ちから、道長への溢れる思いが感じられる。

 まひろは道長との逢瀬のため廃邸を訪れた。道長を見つけ、胸に飛び込む姿が愛おしい。言葉も交わさず道長と抱き合うまひろの満ち足りた表情が心に残る。二人はそのまま口づけを交わした。言葉もいらないほど、心を通わせていることが十二分に分かる。だからこそ、道長からの「妻になってくれ」という言葉は、まひろにとってこれまでになく嬉しいことだったに違いない。けれど、まひろが少しの期待を胸に「それは……私を北の方にしてくれるってこと?」と問いかけた時、道長の表情が曇った。

「妾になれってこと?」

 失望したような吉高の台詞の言い回しに心が苦しくなる。「北の方にしてくれるってこと?」という声色には、先述した通り少しの期待が感じられた。だが、言葉に詰まる道長を見て、まひろは倫子や兼家と向き合う中で知った現実から逃れられないことを思い知ったのかもしれない。加えて、道長を深く愛しているまひろは道長が正妻や他の妾を愛することに耐えられそうもなかった。道長は「俺の心の中ではお前が一番だ」と必死に言い聞かせるが、「いつかは北の方が……」と口にするまひろは今にも泣き出しそうな顔をしている。道長を振り払い、震える声で「耐えられない、そんなの」というまひろの心中を慮ると、心が痛む。

 「ならばどうすればよいのだ!」と道長は憤る。「どうすればお前は納得するのだ」と諭されても、まひろは何も言えなかった。道長と一緒にいたいという願いも、妾になりたくないのも本心だ。まひろには現実的な一面があり、それだけに北の方にしてほしいという到底叶わぬ願いを口にすることができないのだと思う。道長は「勝手なことばかり言うな」と言い捨て、その場を立ち去った。道長が見せた怒りに、まひろは言葉も出ない。途方に暮れ、その場に立ちすくんでいたまひろだったが、廃邸で一人、水面に映る自分に石を投げつけると悲しみが溢れ出した。あまりにも心苦しい幕引きだった。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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