『葬送のフリーレン』アニメ版が描き出した“一つの”物語 第1話から貫かれた構成を紐解く

『葬送のフリーレン』第1話から貫かれた構成

 そして、第18話からはフリーレンとフェルンが一級魔法使いの資格を得るために魔法都市オイサーストで開催される試験に挑む「一級魔法使い選抜試験」編が展開されている。

 アニメ版では最長となるこのエピソードは、宮廷魔術師のデンケンを筆頭に、一癖も二癖もあるキャラクターが一気に増え、複雑な人間関係が交差する群像劇に変わりつつある。

 資格取得のために様々な魔法使いが登場し、難解な試験に挑戦していく様子は、冨樫義博の少年漫画『HUNTER×HUNTER』のハンター試験を思わせ、手数が無数にある極めて複雑で難解なジャンケンに例えられる魔法使い同士の戦いも『HUNTER×HUNTER』の念能力バトルを彷彿とさせる頭脳戦となっており、少年漫画らしい見せ場が続く本作最大の山場となっている。

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 この「一級魔法使い試験」編が、第1シーズンのクライマックスとなりそうな『葬送のフリーレン』だが、ここで物語を区切ったことで、作品全体の輪郭がより明確になったと言えるだろう。

 第二試験でフリーレンは水鏡の悪魔(シュピーゲル)が作り出した自分自身の複製体と戦うことになる。戦いの中では、エルフの魔法使い・ゼーリエとフリーレンの過去のやりとりが挿入される。

 ゼーリエは、大陸最大の統一帝国が魔法の研究と軍事転用を始めたことで、人間の誰もが魔法を使える時代が訪れ、いずれエルフは人間に追い抜かれるだろうと語る。

 そして、フリーレンを殺すものがいるとすれば、魔王か人間の魔法使いだと言うのだが、フリーレンの複製体との戦いの中で、弟子のフェルンが複製体を倒す決め手となる姿が描かれ、やがて人間のフェルンが、エルフのフリーレンを超える魔法使いに成長することが暗示されている。

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 複製体との戦いが描かれた第25〜26話を観た後、改めて第1話を見返すと、フリーレンが幼いフェルンと出会う場面で終わっていたことに驚かされる。

 原作漫画の第1話が、勇者ヒンメルの葬儀の場面を経てフリーレンが旅立つ場面で終わるため、フェルンの登場シーンが入る構成に初めは違和感があったのだが、本作は師匠のフリーレンを弟子のフェルンが超えていく姿を通して、エルフを人間が超えていく物語を本作が描こうとしていたのだと気づき、第1話の構成に納得した。

 独立した短編として各話を観ても楽しめる『葬送のフリーレン』だが、2クールまとめて観ると、点と点が繋がり壮大な物語が浮かび上がってくる。実に見事な隙のない構成である。

■放送情報
『葬送のフリーレン』
日本テレビ系「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」枠にて、毎週金曜23:00〜放送
キャスト:種﨑敦美、市ノ瀬加那、小林千晃、岡本信彦、東地宏樹、上田燿司
原作:山田鐘人、アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
OPテーマ:YOASOBI「勇者」
EDテーマ:milet「Anytime Anywhere」
©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
公式サイト:https://frieren-anime.jp
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Anime_Frieren

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