ジョン・カビラに聞く、アカデミー賞の意義と楽しみ方 授賞式から感じる映画の歴史の歩み

ジョン・カビラが語る、アカデミー賞の特別性

 第96回アカデミー賞授賞式が3月11日(日本時間)に開催される。100年に近い歴史を持つこのアワードは、1年度の映画賞レースにおける締めくくりにもなるため、世界がその結果に注目する。日本でも毎年WOWOWが独占生中継をしており、その案内役を務めるのがジョン・カビラだ。今年で18回目の出演を迎えるジョン・カビラは、案内役の視点からアカデミー賞をどう捉えるのか。今年度も注目のノミネーションが発表された上で、話を聞いた。

「必ずみなさんの興味関心に触れる作品が毎年揃っている」

ーーアカデミー賞の案内役をされているカビラさんが思う、アカデミー賞の意義とは何でしょう?

ジョン・カビラ(以下、カビラ):もう100回近くも、アメリカの映画業界、映画の制作に携わる方、演じ手の方、監督の方々含め技術のスタッフのみなさんが、プロフェッショナリズムを追求する世界の中で、お互いのクリエイティビティを祝福し合う。この“祝し合う”という点が、他になかなかないアワードなんですよね。数多くの映画祭が世界各地で開かれており、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの三大映画祭もありますが、基本的に彼らや作品は“審査の対象”となるわけです。審査というフィルターを通して称えられることにはなりますが、それに対してアカデミー賞はアカデミーのメンバーという形で限定されるものの、映画を生業とする方々がお互いの功績を讃える瞬間をみんなと共有する稀有な場なんです。そして、スターが見せる歓喜の瞬間。演技ではない、その言葉、その表情、打ち震える感動をみなさんと共有できる瞬間でもあります。

――確かに、受賞の瞬間はいつ見ても人それぞれに物語や感動を感じます。

カビラ:受賞スピーチの時間はかなり限定されていますし、もちろん感謝の言葉が中心にはなりますが、そこに織り込まれる作品のテーマをなぞった社会的な課題に言及することもあって。短い時間の中に、その思いの丈をどんな言葉で紡いでくれるのか。そんな新鮮な感動がそこにあります。それが共有できる素晴らしい瞬間でもありますね。

ジョン・カビラ
ジョン・カビラ

――特に近年は様々な出身地の方が受賞される機会が増え、感動的な瞬間が多いと感じます。式典を見るうえでの面白さや、プログラムとしての魅力はどこに感じますか?

カビラ:まず、オープニングがどういう形になるのか考えるだけでもドキドキしますよね。ノミネート作品が網羅されているモンタージュみたいなものでくるのか、それともお笑いでくるのかとか、どういった展開になるのかワクワクする。要するに、このアワードそのものが一つの作品だというふうに捉えられると思うんです。司会者のオープニングトークも気になるところ。「ジミー・キンメルの第一声は何だろう」とか、「どこに視点を集めようとするんだろう」……とか。それに加え、もちろん歌曲賞の披露もあります。今年度ではグラミーで快挙を成し遂げたばかりのビリー・アイリッシュと兄のフィニアスがアカデミー賞にも登場することが予想されますが、当然グラミーとは違う演出にしなければならないわけです。そういう楽しみもありますよね。

――司会者は基本的にコメディアンが選出されていますが、彼らのジョークや話の内容から今のハリウッドやアメリカのトレンドがうかがえる点も面白いですよね。

カビラ:そうですね。今年はストライキの風が吹き荒れた1年だったので、当然ネタとしてこの話題が入ってくることは間違いないと思います。このストライキの理由の一つだったAIをハリウッドはどう取り込むのか、または取り込まないのか。取り込むとしたらどういうふうに演じ、脚本家の利益も確保するのか、利益の配分はどうするのか……ということが大きな論点でしたが、そこもえぐってくるでしょうね。その話題で軽やかに笑わしてくれるってところがまた凄いです。今後のエンターテインメント界の将来を左右する技術であるAIを、ジミーがどう炙ってくれるのか今から楽しみです。

ジョン・カビラ
ジョン・カビラ

――ジミー・キンメルなら「僕がこれから話すことは全部Chat GPTが考えた」くらいのジョークも言いそうですよね。期待が高まります。

カビラ:そうですね。あと今年は大統領選挙の年でもあります。ジミーはどちらかと言えばリベラルサイドの方なので、トランプ陣営の皆さんをヤキモキさせるようなコメントにも期待できるかもしれません。

――本年度の作品賞ノミネート作品にはどんな特徴があると考えでいますか?

カビラ:いつも通り、というと「変化はないの?」という質問ですぐ返されてしまいそうですが、実在する人物のドラマ、歴史的な転換点のドラマ、社会的な話題をえぐるドラマ、音楽というクリエイティビティを称賛する映画や、ポップカルチャーの一つのアイコンであるアイテムをドラマ化して、男性も女性もジェンダーの檻の中から解き放つような内容の作品もあります。必ずみなさんの興味関心に触れる作品が毎年揃っていると思いますね。だからぜひ、それぞれの作品を配信や劇場でご覧いただきたい。日本人にとっては、特に心して観なければいけない作品もありますが、作品賞の候補になる価値が当然ある映画が揃っています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる