『劇場版ハイキュー!!』作画に宿るバレーボールの醍醐味 『THE FIRST SLAM DUNK』を経て
ひとつ気になったのが、『THE FIRST SLAM DUNK』を経た今の劇場アニメの鑑賞者に、2D作画でバレーボールを描く『ハイキュー!!』がどのように映ったかということだ。『THE FIRST SLAM DUNK』はフル3DCGによるキャラクターたちの精緻な動きと、選手の側まで寄れるカメラワークによって、本物のスポーツをコートの中で観ているような印象を与えた。このことで、スポーツアニメへの見方が何段階か上がった。見る目が厳しくなったとも言える。
『THE FIRST SLAM DUNK』井上雄彦の絵をいかに3DCGで再現? CG担当が明かす制作過程
2022年12月に公開され、大ヒットを記録している『THE FIRST SLAM DUNK』。その臨場感あるバスケットボールの試…
『ハイキュー!!』の場合は、元からバレーボールというスポーツにおける選手の動きをしっかりと把握した上で描き、実際の試合を観ているような印象を与えてくれていた。ここに2Dによる作画、すなわち手で線を描くことによって試合の中でのちょっとしたプレーをややデフォルメし、腕がムチのようにしなったり、体がグッと伸びたりするような絵を入れることで、強さや速さをより感じさせることに成功していた。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』でも、そうした作画力は存分に発揮されている。日本が誇る作画アニメを支えるアニメーターの技量が、リアリティのある展開にスペシャルな味を加えている。
カメラワークも凄い。とりわけ最終盤、ラリーが続く展開でこれはどういう映像なんだと思ったところで、研磨の視点なんだと気付いて最後まで自分も一緒にコートに立っていたのだといった感慨が浮かぶ。スタンドから観戦しているだけでは味わえないバレーボールの醍醐味を味わって、改めてバレーボールをプレーする選手の凄さに気づける。そんな映画だ。
そうした結末の付け方もやはり、研磨を『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』を主人公然とさせる要因になっているが、試合はこれで終わりではない。先に2部作と発表されているように先へと続く。そこに立つのは誰なのか、繰り広げられるのはどのような試合なのか。原作を読んでいる人には自明でも、アニメでシリーズを追っている人には不明だから言及を避けるとして、ひとつだけ言うなら次はもう少し清水潔子の姿を見せてほしいし、せめて一言そのセリフを聞かせてほしい。
ファンからの切なる願いだ。
■公開情報
『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』
全国公開中
監督・脚本:満仲勧
原作:『ハイキュー‼』古舘春一(集英社ジャンプ コミックス刊)
キャスト:村瀬歩、石川界人、日野聡、入野自由、林勇、細谷佳正、岡本信彦、内山昂輝、斉藤壮馬、増田俊樹、名塚佳織、諸星すみれ、神谷浩史、江川央生、梶裕貴、中村悠一、立花慎之介、石井マークほか
製作委員会:東宝、集英社、MBS、電通、Production I.G、SME、ムービック
制作スタジオ:Production I.G
配給:東宝
©「ハイキュー‼」製作委員会 ©古舘春一/集英社
公式サイト:https://haikyu.jp/
公式X(旧Twitter):@animehaikyu_com