『ブギウギ』“有名人”スズ子と戦後復興とのズレ 「東京ブギウギ」は美談で終わらない

『ブギウギ』東京ブギウギは美談ではない

 贅沢が禁止され、エンターテインメントにも様々な制限が設けられた戦時中。戦争が終わって3年、ようやくスズ子は自由に歌って踊れるようになり、その姿は多くの人々に生きる勇気と希望を与えた。しかし、戦争の傷跡はまだ至るところに生々しく残っており、その日一日を生きるだけで精一杯という人も多い。パンパンガールはもとより、スズ子が街中で何度も遭遇している靴磨きの少年・達彦(蒼昴)もそう。山下は、わざと水溜りをつくり、道行く人に足を突っ込ませた上で交渉を持ちかける達彦を咎めるが、まだ幼い彼がそうした悪知恵を働かせざるを得ない厳しい現実がある。真っ当な商売だけじゃ食べていけないのだ。

 スズ子はそのことを十分に理解している。だが、実際に苦しい身の上の人からしてみれば、「東京ブギウギ」を戦後復興を象徴する楽曲としてもてはやす世間は自分たちの存在を無視しているように思えるのかもしれないし、それをノリノリで歌うスズ子のこともお気楽に見えるのかもしれない。「福来スズ子は“ブギの女王”として戦後を明るく照らしました」で終わらないところに、この物語の誠実さを感じる。

ガード下の路地にて。少年を見つめる福来スズ子(趣里)

 今回、達彦の母親として再登場となったタイ子(藤間爽子)。スズ子のかつての親友である彼女が「東京ブギウギ」を嫌う理由も気になるところだ。

 一方で、私たちはスズ子がとてつもなく波乱万丈な人生を送ってきたこと。多くの苦難や悲しみを乗り越えてきたからこそ、今の彼女があることを知っている。それを知っているか否かでは、スズ子が軽快に歌い上げる〈心ズキズキ ワクワク〉というフレーズも聴こえ方が変わってくるだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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