『ブギウギ』趣里が“ワクワク”に向かって歩みだす “朝ドラあるある”の遊び心感じる演出も
痛みの感覚もはっきりと刻まれている。「東京ブギウギ」が発表された1947年(昭和22年)はいまだ戦争の記憶も生々しかった。そんな中で、スズ子が出会った靴磨きの少年のように、人々は明日への希望に胸を膨らませて懸命にその日を生きていた。スズ子自身、痛みを伴う出産を経験し、愛助(水上恒司)の死を乗り越えて、自らの意思でもう一度歌うことを決意した。痛みは眼前にあって誰もがそれぞれの傷を抱えていた。
ズキズキの後にはワクワクが待っている。スズ子も娘の愛子と生きる未来にワクワクしていたのではないだろうか。そのこともあってか、愛子を人まかせにしてステージに立つことは考えられなかった。「ワテはやれるかぎり自分で愛子の世話をしたいんです」とスズ子は言い、稽古場に愛子を連れてくることの了承を得た。シングルマザーのスズ子は、幼い我が子と二人でキャリアの新たな一歩を踏み出した。
余談だが、靴磨きの少年と出会った街角になつかしい屋号が並んでいたことにお気づきになっただろうか。赤ちょうちんの「あかまつ」は2019年度後期のNHK連続テレビ小説『スカーレット』、ジャズ喫茶「ヨーソロー」は同じく2016年度後期の『べっぴんさん』の舞台である。これまでにも、スズ子の実家のはな湯に『カムカムエヴリバディ』の安子(上白石萌音)のラジオが置かれていたり、『おちょやん』『わろてんか』『マッサン』の小道具が登場するなど、遊び心ある仕掛けでファンの目を楽しませている。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK