『ブギウギ』ついに「東京ブギウギ」披露! 史実ではどのように楽曲が誕生した?

『ブギウギ』「東京ブギウギ」誕生の背景

「これは福来くんの復興ソングでもあると同時に、日本の復興ソングでもあるんだ!」

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第90話では、そう言い残して、まさに浮き足立っている羽鳥(草彅剛)が作った楽曲「東京ブギウギ」を、ついにスズ子(趣里)がレコーディングする。

 『ブギウギ』でりつ子(菊地凛子)やスズ子が歌う曲は実際に制作されたものやヒットしたものだが、「東京ブギウギ」も1947年に発表され、スズ子のモデルである笠置シヅ子の歌唱によりヒットした歌である。「今から77年も前……」と思うかもしれないがこの曲は、何度もカバーされており、最近ではビールのCMソングとしてトータス松本がカバー。現在でもその一部がCMソングとして流れている。そのため、曲を聞けば、老若男女問わず「聴いたことある!」とピンとくるだろう。「東京ブギウギ」は現代にまで歌い継がれている名曲なのである。

左から、山下達夫(近藤芳正)、佐原(夙川アトム)、福来スズ子(趣里)

 『ブギウギ』の第89話では、新曲のメロディに悩んでいた羽鳥が、自分とスズ子のこれまでを思い出し、その後、電車に乗って周囲の人たちを見ながら「再起しなければならないのは君だけじゃないんだよな」と考えた後でこの曲のメロディを思いついている場面が描かれている。羽鳥のモデルで、「東京ブギウギ」を作曲した服部良一も実際に、電車に乗っている時に、レールのジョイント音とつり革が網棚のふちに当たる音からメロディを思いつき、急いで駅を降りて、飛び込んだ喫茶店のナプキンに譜面を書いたと言われている。

 服部はもともとジャズが好きで、ジャズの要素を楽曲に織り込むことでヒット曲を生み出してきた作曲家である。ジャズは哀愁が漂うブルースに近いジャンルであるので、戦後、焼け野原になった東京の様子を見て服部は、ブルース調の楽曲を作ろうとしていたそう。だが、意見を求められた作詞家でジャズ評論家だった野川香文が明るいリズムの曲を作ることをアドバイスし、服部は短めの同じリズムが何度も繰り返され、耳に残ることが特徴で、明るいメロディに合う「ブギ」の曲を考え始めたと言われている。

左から、福来スズ子(趣里)、羽鳥善一(草彅剛)

 ちなみに野川は、シヅ子が歌った「センチメンタル・ダイナ」を作詞した人物であることから『ブギウギ』で宮本亞門が演じた藤村薫のモデルではないかとされている。第89話では「東京ブギウギ」を誰が作詞するかで、羽鳥が「藤村じゃないよね!」と言う場面がある。実際に「東京ブギウギ」を作詞したのは野川ではないので合っているのだが、ここで久しぶりに藤村の名前が出てきたことが少し不思議だった。しかしこの「ブギ」楽曲の誕生のエピソードを知ると納得できるところがある。転機となるアドバイスをくれたかも知れない作詞家を使わずに、ほかに合いそうな人を探そうとするところも、音楽のことになるとそれしか考えられなくなる羽鳥らしいといえるのではないだろうか。

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