異色の経歴から影響を受けた映画監督まで 『Firebird』ペーテル・レバネ監督インタビュー
「自分が語りたいと思える作品を作りたい」
ーー脚本はセルゲイ役のトム・プライヤーと共同で書かれています。セルゲイの原作から大きく変わったところはあるのでしょうか?
レバネ:基本的には原作に沿った上で、どこを描いてどこを描かないかという取捨選択になっていますが、大胆に変えているところがひとつあります。それは、セルゲイ(トム・プライヤー)とロマン(オレグ・ザゴロドニー)の同僚である女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)の描写です。セルゲイ自身、やはりルイーザに対しては苦い思いがあるので、原作では彼女に対するネガティブな描写があったのですが、我々としては、彼女もまた彼らと同じくらいの犠牲を払った被害者だと思ったので、映画では原作と比べて、より好意的に描いています。
ーー終盤にかけて、ルイーザの存在感が増しているように感じましたが、そういう背景があったんですね。
レバネ:そこに関しては、脚本を共同執筆してくれたトムがすごく助けになりました。僕はどちらかと言うとストーリー全体の構造を考えがちで、そちらばかりに意識が行ってしまうのですが、トムは役者でもあるので、キャラクターの心情に寄り添ったセリフを生み出してくれるんです。そういった“生きたセリフ”は、間違いなくトムありきのものですね。
ーー原作者のセルゲイは完成した映画を観ることが叶わず、2017年に亡くなられています。もし彼がこの作品を観ることができたなら、どのような感想を抱いたと思いますか?
レバネ:彼はきっと気に入ってくれたと思います。才能あるスタッフやキャストに恵まれましたし、我々も精一杯真心を込めて、最善を尽くして映画にしたので、喜んでくれたのではないでしょうか。残念ながら実現はしませんでしたが、セルゲイも生前、ロンドンのプレミアに参加したいと話してくれていたので。
ーーちなみに、監督としては今後控えている作品や準備している作品はあるんですか?
レバネ:実は、この作品を完成させてから、オフの期間を設けてずっと休んでいたんです。その間に監督としてのオファーも来てはいたのですが、自分自身やってみたいという作品に巡り合いませんでした。ただ、3週間くらい前からまた脚本を書き始めているんです。
ーーそうなんですね。再び脚本を書き始めたのにはどういうきっかけがあったんですか?
レバネ:「次に語りたいのはこのストーリーだ」というように、突然フッと湧いてきたんです。僕自身、やはり雇われ監督のような働き方はしたくないので、自分が語りたいと思える作品を作りたいと思っています。映画を1本作るのに、自分の人生のうちの2~3年を捧げることになるので、自分が本当にやりたいかどうかが鍵ですね。
ーーちなみにいま書いている脚本がどういうストーリーか、差し支えなければ教えていただきたいです。
レバネ:簡単に言うと、人生において、自分が歩むべき道を見出すことについての物語です。『Firebird ファイアバード』とはだいぶ毛色の異なる作品で、そこまで悲劇的ではない、観客をインスパイアするようなヒューマンドラマでありラブストーリーです。まだまだ先になると思いますが、ぜひ楽しみにしていてください。
■公開情報
『Firebird ファイアバード』
2月9日(金)新宿ピカデリー、なんばパークスシネマほかにて公開
監督・脚本:ペーテル・レバネ
共同脚本:トム・プライヤー、セルゲイ・フェティソフ
原作 : セルゲイ・フェティソフ
出演 : トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ダイアナ・ポザルスカヤ
配給 : リアリーライクフィルムズ
2021年/エストニア・イギリス合作/英語・ロシア語/107分/1.85:1/5.1ch/DCP & Blu-ray/日本語字幕翻訳 : 大沢晴美
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