『ダンジョン飯』マルシルは2024年の一般人代表? 昆虫食時代に響くチャレンジ魂

『ダンジョン飯』マルシルは一般人代表だ

持続可能な次世代の食糧「昆虫食」

 今や昆虫食は、世界中で注目されるムーブメント。昆虫食専門の自動販売機が設置され、本格的な昆虫食レストランがオープンし、有名企業もオリジナルの昆虫食に取り組んでいる(無印良品では、コオロギせんべいやコオロギチョコが発売されている)。4年連続で「世界のベストレストラン50」第1位に輝いた名店ノーマ(noma)で、生エビに蟻を乗せた料理が出されたことも話題になった。

 昆虫食ブームのきっかけとなったのは、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した、食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書。

 その報告書によれば、そもそも我々人間は、甲虫類、ケムシ、ハチ及びアリなど1990種類を超える昆虫類を食しており、さらに

・昆虫類の多くはたん白質及び良質の脂肪を多く含み、カルシウム、鉄分及び亜鉛の量が豊富
・昆虫の飼育が産業化されれば、いずれヒトの消費に回る魚の供給量が増加する
・昆虫類の疾病がヒトに伝播するとは非常に考えにくい

 というメリットもあるという。(※)持続可能な次世代の食糧……SDGsな観点からも注目されているのが昆虫食なのだ。そう考えると『ダンジョン飯』は、ファンタジーという装いで新しい食のあり方を提示した、とーってもSDGsライクな、「持続可能なアニメーション作品」なのではないか。

 この作品が素晴らしいのは、「一見食材には適さないように思えるものでも、調理法ひとつで美味しい料理になるのだ」という、無限の可能性を教えてくれること。大サソリの調理に手こずるライオスを見かねて、センシはアドバイスをしつつ実演してみせる。

「ハサミ、頭、足、尾を必ず落とす。尾は腹を下す。身にも切れ込みを入れておく。熱も通りやすく、ダシも出て、鍋全体が美味くなる。食べやすいしな。内臓も簡単に取っておく。苦いし歯触りが良くない」

 歩きキノコも同様だ。

「尻と表面3センチメートル分捨てる。足は美味いので全て入れる。独特ないい匂いがするだろう?」

 生態系としてのモンスターを解剖学的に研究し尽くすことで、必要になるであろう下準備と、適切であろう調理方法が提示される。筆者はそこに、単なるゲテモノ料理の悪趣味ショウではなく、未来への食料=昆虫食の提言という、崇高な理念を感じてしまうのだ。いわばマルシルは、昆虫食に対してまだ偏見を捨てきれない一般人代表のようなポジションなのである。

 第3話に、こんなシーンがある。「動く鎧を食材にしよう!」と鼻息荒くライオスが提案すると、マルシルは「こんな訳のわからないもの、食べられるはずないでしょ!」と激昂。するとライオスはこう優しく諭すのだ……「まあまあ、マルシル。どんな食べ物も、最初の一口は訳のわからないものだ」。飽くなき食へのチャレンジスピリット!

 毎週欠かさず『ダンジョン飯』をチェックしている筆者も、2024年は昆虫食デビューすることを固く誓っているのである。

参考

※ https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03830870295

■公開・放送情報
『ダンジョン飯』
TOKYO MXほか全国28局にて、連続2クール放送中
Netflixほか各配信サイトにて、地上波同時配信
キャスト:熊谷健太郎、千本木彩花、泊明日菜、中博史、早見沙織、三木晶、川田紳司、加藤渉、高橋李依、富田美憂、奈良徹、広瀬裕也、河村螢、小林ゆう
原作:九井諒子
監督:宮島善博
シリーズ構成:うえのきみこ
キャラクターデザイン:竹田直樹
モンスターデザイン:金子雄人
コンセプトアート:嶋田清香
料理デザイン:もみじ真魚
副監督:佐竹秀幸
美術監督:西口早智子、錦見佑亮(インスパイア―ド)
美術監修:増山修(インスパイア―ド)
色彩設計:武田仁基
撮影監督:志良堂勝規(グラフィニカ)
編集:吉武将人
音楽:光田康典
音楽制作:KADOKAWA
音響監督:吉田光平
音響効果:小山健二(サウンドボックス)
録音調整:八巻大樹(クラングクラン)
アニメーションプロデューサー:志太駿介
アニメーション制作:TRIGGER
製作:「ダンジョン飯」製作委員会
オープニング主題歌 「Sleep Walking Orchestra」 BUMP OF CHICKEN(TOY'S FACTORY)
エンディング主題歌 「Party!!」 緑黄色社会(Sony Music Labels)
©九井諒子・KADOKAWA 刊/「ダンジョン飯」製作委員会
公式サイト:https://delicious-in-dungeon.com
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/dun_meshi_anime

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる