『トップガン マーヴェリック』のアツい映画論 同じ“魂”は『侍タイムスリッパー』にも

『トップガン マーヴェリック』の映画論

 アメリカ海軍のパイロット養成学校を舞台に、若者たちの恋と青春を描いた1986年公開の大ヒット作『トップガン』。その36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』が、11月15日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)でついに地上波初放送される。

 もしあなたが、「1作目はすでに鑑賞済みだけど、その続編はまだ観ていない」としたら、おそらく冒頭で混乱をきたすことだろう。前作とほぼ同じようなオープニングシーンで幕をあけるからだ。ハロルド・フォルターメイヤーによる「ゴォーン、ゴォーン」というトップガン・アンセムが鳴り響き、オレンジ色に染まった朝焼けのなかデッキクルーがハンドサインを送り、戦闘機が空母を離着陸する。そして気がつくと、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」がゴキゲンに流れている。

 前作の監督トニー・スコットが故人となっていたため、今作にはジョセフ・コシンスキーが起用された。「(『トップガン』のオープニングは)私にとって『スター・ウォーズ』と同じくらい象徴的なものです。だからこそ、最初の映画と同じ方法で映画を始めたいと思ったのです」と彼はインタビューで語っている(※)。36年ぶりに伝説を蘇らせるにあたって、コシンスキーはあえてトニー・スコット的な手法を踏襲したのだ。

 最近でも、28年ぶりの新作『ツイスターズ』や36年ぶりの『ビートルジュース ビートルジュース』など、前作からのタイムスパンがドえらく長いタイトルが公開されているが、ここまでオリジンをまんま受け継いだ続編は珍しい。思えばジョセフ・コシンスキーは、オリジナルから28年後に制作された『トロン:レガシー』も、80年代のsci-fi感覚を感じさせるレトロフューチャームービーとして蘇らせていた。

 トム・クルーズとは『オブリビオン』でタッグを組み、強固な信頼関係が築かれていたが、それ以上に彼の起用は、「数十年前の映画の精神性を受け継いで、新たな伝説を創り出すことができるフィルムメーカー」という実績があってのことだろう。そして、その目論見はみごと成功した。この映画は、トム・クルーズのキャリア史上最高となる全世界興行収入10億ドル超えを達成(最終的には14億ドル)。彼の偉大なフィルモグラフィーに、さらなるマスターピースが加わった。

 そして何よりも『トップガン マーヴェリック』が素晴らしいのは、この映画自体がトム・クルーズの映画論になっていることだ。

 トム・クルーズ演じるマーヴェリックは、時代から取り残された男だ。すでに50代半ばを迎えているというのに、裏方に回ることなく、現役パイロットにこだわり続けている。しかも冒頭のシークエンスで描かれるのは、自分史上最高を更新するため、マッハ10の壁を突破しようとする姿。現状維持ではなく、限界を突破することに彼は命を燃やしている。

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