『王様戦隊キングオージャー』に“モブ”は存在しない 小さな結束が集まってより強い結束に

『キングオージャー』に“モブ”は存在しない

 いつもなら早起きは辛いのに、日曜の朝だけは早々に目が覚める。そんな子ども時代を過ごした人は多いのではないだろうか。また、ちょうど今、休みくらいゆっくり寝させてほしいのに、日曜日の朝に元気な子どもたちに苦笑いをしてしまっている人もいるだろう。どの時代も日曜の朝に楽しみにしているのは、その時間帯に放送されるアニメや特撮番組である。「ニチアサ」と呼ばれ、カテゴライズされるようになったそこに今、大注目の番組がある。“戦隊モノ”と呼ばれるスーパー戦隊シリーズの47作目『王様戦隊キングオージャー』(テレビ朝日系)だ。

 大まかなストーリーはこうだ。かつて5人の英雄と守護神キングオージャーが地帝国バグナラクを打ち倒し、人類を救った。その後、5つの国が生まれ、5人の英雄は各国の王となり長きに渡る平和が訪れた。だが、「2000年の時を経て地の底からバグナラクは蘇る」という予言通り、予言の年を迎えた現代のチキューでバグナラクが復活してしまう。

 本作の大きな魅力は、大小さまざまな「結束」を丁寧に描いていることではないだろうか。

 過去の歴史から国が生まれ、そこの代表がヒーローとなるという展開は、同じく「ニチアサ」枠で放送されている仮面ライダーのひとつである『仮面ライダービルド』(2017年/テレビ朝日系)にもあったものである。ある出来事によって北都、東都、西都の3つの国に分かれてしまった日本で、それぞれの土地に生まれた仮面ライダーたちは最初は対立するが、次第に全ての元凶となった敵を倒すために協力していく。しかし、大ボスに立ち向かえるライダーは1人。つまり最終回に向かって「ここは俺に任せて、お前は先に行け!」という展開が起きるのだ。これは「みんなで力を合わせる」ことが大事になる結束とはまた違うものとなる。

 余談だが、本作のチーフプロデューサーを務めている大森敬仁は、実は『ビルド』のチーフプロデューサーも務めている。世界観が似ているようで異なる結末の『ビルド』もまた傑作のひとつなので、気になった人はチェックしてほしい。

 スーパー戦隊といえば数名がチームとなり、色分けされたマスクとスーツで武装したヒーローに変身し、主に赤を中心に怪人と戦うストーリーが基本コンセプト。そのため“戦隊モノ”は、メインのヒーローたちにフォーカスし、それぞれの成長や支え合って強くなっていく様が描かれることが多い。本作もその流れは汲んでおり、赤のキングクワガタオージャーに変身するギラ(酒井大成)は当初、王家の血を引く者ではあったがほかの4人と違って「国王」ではなく、弱い部分もあった。ギラは5国の統一と支配を目論む兄のラクレス(矢野聖人)と対立し、時には仲間の力を借りながら国民に信頼される王として成長。それと同時にキングオージャーとしての絆も強くなり、バグナラクやあとから登場する敵組織・宇蟲五道化からチキューを守る力も強くなっていっていった。これがこれまでならメインストーリーとなって描かれていたであろういわゆる“結束”である。

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