『おっさんずラブ』続編で描かれる“好き”のその先 春田&牧の関係を揺さぶる恋の刺客も?

『おっさんずラブ』続編が描く好きのその先

 本気で恋をする人間の姿とは、こんなにもみっともなく、健気でいじらしいものなのか。そう教えてくれたドラマがついに帰ってくる。

 社会現象とも言える大ヒットとなった『おっさんずラブ』シリーズの続編にして、5年ぶりの新作『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)。製作発表時には“OL民”(おっさんずラブファンの呼称)から続々と歓喜の声が挙がった本作が、1月5日より放送される。

 物語は、天空不動産東京第二営業所で働く春田創一(田中圭)に突如としてモテ期が到来するところから始まった。お相手は春田をはじめ、部下たちから信頼される部長の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と、本社から異動してきたエリート若手社員の牧凌太(林遣都)。そんな2人から求愛を受ける春田とは、一体どんな奴なのか。さぞかし良い男に違いない。きっとドラマを観たことがない人なら、そう思うだろう。

 しかし、春田は当初33歳独身で異性からは全くモテず、営業成績も今一つ。性格も優柔不断なところがあり、基本的にはヘタレだ。牧は合コンでも女性陣から歓声が挙がるほどのイケメン、黒澤に至っては蝶子(大塚寧々)という美人妻もいるのに、「なんでわざわざ春田を……?」と思わなくもない。だが、本来は恋愛対象ではない2人からの求愛にも嫌悪感を示すことなく、戸惑いながらも誠実に向き合おうとする姿を見ているうちに春田がモテる理由も何となく分かってきた。ちょっぴりおバカで情に脆いところも、絶妙に母性本能をくすぐる。もういい年なのに、全然大人っぽくない。そこが春田の最大の魅力であり、本作を傑作たらしめている部分なのではないだろうか。

 そんな春田に恋する過程で、普段は立派な大人である黒澤や牧からも、ある意味で情けない一面が引き出されていった。彼らだけじゃない。春田をうっかり好きになってしまった幼なじみのちず(内田理央)も、牧の元交際相手でのちに黒澤に心惹かれていく武川(眞島秀和)も、元夫である黒澤の部下・マロ(金子大地)との年の差恋愛に躊躇する蝶子も、舞香(伊藤修子)と鉄平(児嶋一哉)カップルも、本当に好きな人を目の前にしたら大人だってなりふり構ってられないし、時には醜態も晒してしまう。その姿こそがおかしくて愛おしく、いつの間にか本気で彼らを応援していて、果てには泣いている自分に度々驚かされる。

 特にドラマの最終話で、黒澤が「春田、行けぇ!」と愛する“はるたん”を牧のもとに送り出す場面や、『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』で一度はすれ違いから別れるも、改めて牧の大切さに気づかされた春田が「死んでも牧と一緒にいたい」と再プロポーズする場面は涙なしには見られなかった。パラレルワールドドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』を含め、同性愛であることを取り立てて問題にせず、蝶子の台詞を借りるなら「人を好きになるのに年齢も性別も関係ない」ということを登場人物たちの姿を通して描き続けてきたところに本シリーズの真髄がある。

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