リアルサウンド映画部編集部6人が選ぶ、2023年公開・配信の映画TOP10
間瀬佑一
1. 『BLUE GIANT』
2. 『キリエのうた』
3. 『まなみ100%』
4. 『ザ・ホエール』
5. 『バービー』
6. 『TAR/ター』
7. 『正欲』
8. 『ザ・クリエイター/創造者』
9. 『リバー、流れないでよ』
10. 『怪物』
今年は何よりも『BLUE GIANT』の熱量にグッときた。第一線のプロが奏でる“熱いジャズ”を映画館の音響で味わい、ジャズプレイヤーが抱く心象風景を描き出した先鋭的な映像表現に酔いしれる。音×映像という純粋な体験としての歓びでいえば最大級の作品だった。『キリエのうた』も「アイナ・ジ・エンドの才能を浴びる」という点で、岩井俊二監督の映像美とあわせて突き抜けた輝きを放っていた。
ランキングを作るにあたって、個人的には、ある種の“分かりやすさ”を伴った感動を生み出した作品を評価したい。『ザ・ホエール』『バービー』『怪物』は、そのメッセージ性を“用意されたカタルシス”によって万人に届くものに昇華しており、かつ議論の呼び水ともなるような開かれた作品だった。比較すると『TAR/ター』は閉じた作品かもしれないが、キャンセルカルチャーを取り巻く議論の全てを内包していると言っても過言ではない。今年の中で最も批評を求めた作品だった。
『ザ・クリエイター/創造者』の描く“未来”は一見の価値あり、『リバー、流れないでよ』の「2分ループ劇」は不思議と飽きがこない絶妙な演出。そして第3位に位置付けた『まなみ100%』は「片思い系男子」必見の傑作だ。すべての同類の男子を悶えさせ、彼らの「まなみちゃん」を思い起こさせるほど徹底した自伝的映画であり、ある意味ではここまで突き抜けた作品は他にないとも言える。
橋本光生
1. 『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
2. 『BLUE GIANT』
3. 『怪物』
4. 『月』
5. 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
6. 『シン・仮面ライダー』
7. 『ヴァチカンのエクソシスト』
8. 『グランツーリスモ』
9. 『アシスタント』
10. 『メンゲレと私』
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は前作からさらなる進化を遂げることに成功した1作であった。アニメだからこそ表現可能なカメラワークと映像美は、劇場で映画を観ることの楽しさを改めて教えてくれた。漫画なのに音が聞こえると言われていた『BLUE GIANT』はまさにその言葉が現実となった作品だった。映画における音楽の力を圧倒的に堪能することができ、映画を観たあとはサントラの視聴が必須となる作品だ。
『怪物』や『月』は簡単に言葉にはできないしんどさが特徴的な作品だった。自分たちがずれているのか世界がおかしいのか。家族や居場所という近年多くの作品のテーマとされている内容をより深く追求した作品だった。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』もマルチバースを取り込んだ壮大な家族の物語だった。
『ヴァチカンのエクソシスト』『グランツーリスモ』は誰もが楽しむことができるアメリカ映画だった。主演のラッセル・クロウがキャラクターとして際立っており、ホラー作品ではあるものの笑いにも溢れる作品として完成されていた『ヴァチカンのエクソシスト』。『グランツーリスモ』は手に汗握るレースシーンが満載の熱い物語で、何度も観たくなる作品だ。
『アシスタント』は、権力、労働搾取、不条理など現代社会で働く誰もが疑問を持つであろう内容が詰まった作品である。主人公ジェーンの表情演技が特徴的な作品だった。『メンゲレと私』は『ゲッベルスと私』『ユダヤ人の私』に続くドキュメンタリー作品「ホロコースト証言シリーズ」第3弾となる最終作。今作の語り部のダニエル・ハノッホはアウシュヴィッツ強制収容所に12歳の時に連行され、“死の天使”と呼ばれた医師ヨーゼフ・メンゲレの寵愛を受け、特異な収容所生活を送る。暴力、伝染病、カニバリズムが横行する人類史の最暗部を実際に目撃した。ダニエル・ハノッホの語り口がどこかユーモラスに感じて、今までにない印象的な体験だった。監督が舞台挨拶にて発言していた「過去が未来になってしまう」という言葉が、日々のニュースを見ているとどこか近く感じてしまう。
佐藤アーシャマリア
1. 『アイカツ! 10th STORY 〜未来へのSTARWAY〜』
2. 『君たちはどう生きるか』
3. 『ちひろさん』
4. 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
5. 『マイ・エレメント』
6. 『SAND LAND』
7. 『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』
8. 『怪物』
9. 『バービー』
10. 『逆転のトライアングル』
10年前に初めてアニメで観た時から、自分の心には常に『アイカツ』の存在があった。当時も自分と同い年だった主人公たちが、『アイカツ! 10th STORY 〜未来へのSTARWAY〜』でスクリーンに帰ってくると知った時の感動は今でも忘れられない。10年間欠かさず聞いていた「カレンダーガール」がもっとだいすきな曲になった。
『君たちはどう生きるか』は、Z世代の私にとって“大人になって初めて観るジブリ作品”として印象強く残った。一方、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と『マイ・エレメント』では、海外アニメーションならではのカラフルで心躍る世界観が楽しめたのが良かった。
『ちひろさん』『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』『SAND LAND』は、心が疲れてしまった時にもう一度観直したくなる作品。対して、『怪物』『バービー』『逆転のトライアングル』は、人が本性をあらわにしていく面白さという共通点があって、観るのに体力がいるけど時間を置いてまた観直したくなる作品だった。