東山紀之は近年稀に見る“時代劇スター”だった 『必殺仕事人』シリーズは次世代へ継承?

東山紀之の引退がエンタメ界にもたらす影響

 12月29日21時からABCテレビ・テレビ朝日系で放送される東山紀之主演ドラマ『必殺仕事人』は、年内で引退を表明している東山にとって現役最後のテレビ出演となる。俳優としても数々の実績を残してきた東山のキャリアを振り返り、東山版としては最終回になるであろう『必殺仕事人』への期待を書いてみたい。

 東山は、1982年に錦織一清、植草克秀らと共に少年隊のメンバーとなり、「ヒガシ」の愛称で80年代のアイドルシーンを牽引した。1985年「仮面舞踏会」でレコードデビューを果たし、各新人賞を総なめ、紅白にも出演。全員がバク転、バク宙ができる身体能力や歌唱力に加え、演技力もあり、その高いスキルを活かしたオリジナルミュージカル『PLAYZONE』が1986年に青山劇場で初演され、以降、23年間主演を務めた。

 東山はグループの活動の傍らソロとしても活躍し、時代劇からコメディまで、幅広い演技をこなした。流行語にもなった「しょうゆ顔」と美しい体幹、そしてストイックな印象。そんな少女漫画の王子様的存在感がハマり、沖田総司、源義経、光源氏、『名奉行 遠山の金さん』(テレビ朝日系)シリーズの若手同心など、時代劇で存在感を見せる。その後、1993年にはNHK大河ドラマ『琉球の風』でジャニーズ初の主演を務めることになった。

 また、1995年の『ザ・シェフ』(日本テレビ系)や1996年『Dear ウーマン』(TBS系)、2006年『喰いタン』(日本テレビ系)などの現代劇では、ストイックなイメージを極限まで広げ、自分のキャラを活かした役を演じた。2000年代以降は俳優業に比重を置き、2005年から2019年まで続いた『新・棟居刑事』(テレビ朝日系)シリーズ、2007年からの『必殺仕事人』シリーズ、2013年からの『大岡越前』(NHK BSプレミアム)シリーズ、2015年からの『刑事7人』(テレビ朝日系)など数多くの連続ドラマで主演を務めている。

 『必殺仕事人』にしろ『大岡越前』にしろ、昔から続くシリーズを絶やさず続けてきことは、時代劇を守ることもそうだが、若手俳優たちが時代劇やシリーズものを経験できる場を守ってきたことにもなり、多大な功績だといえる。本来なら、年齢的にもこれから渋い大人の役者として活躍が期待される東山。かつての時代劇俳優や銀幕スターのような特別感がある看板俳優の損失は、エンターテインメント界にとって計り知れない。

 50周年を迎えた『必殺仕事人』シリーズは、1972年に第1作『必殺仕掛人』がスタートして以来、藤田まこと演じる中村主水をはじめとする仕事人たちが、弱者の晴らせぬ恨みを晴らす姿を描いた時代劇。1991年で制作が止まっていた藤田の『必殺』シリーズを、15年の時を経て藤田からバトンを受け継ぎ、2007年にスタートした東山紀之主演の『必殺』シリーズは、正月恒例のスペシャル時代劇として続いてきた。そして今作も、裏で仕事人を務める奉行所の見廻り同心である渡辺小五郎(東山紀之)を中心に、経師屋の涼次(松岡昌宏)、リュウ(知念侑李)、花御殿のお菊(和久井映見)らが、世にはびこる悪をスカッと成敗する。

 今回の物語では、江戸の町に「人斬り牛鬼」と呼ばれて恐れられる辻斬りが出没。相次ぐ犠牲者はいずれもよからぬ噂のつきまとう人物だが、川に橋を設置する大がかりな工事を推し進める作事奉行の豊川大和守忠次(田山涼成)から、見回りを強化するよう奉行所にお達しがくるといった内容。前作で、長年レギュラーを続けてきた遠藤憲一演じる瓦屋の陣八郎が壮絶な死を遂げ、大きな存在を失った4人の仕事人は再編を迫られることに。新たな仕事人として、松下奈緒が演じる16年ぶりの女性仕事人・棗が参戦。また、中尾明慶演じる流しの仕事人・雪丸も登場し、再編に揺れる仕事人たちをかき回していくという。

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