萩原みのり、趣里、杉咲花、森七菜ら 2023年に存在感を見せた10人の女性俳優たち

唐田えりか&芋生悠

 2022年に公開された『の方へ、流れる』でスクリーンにカムバックした唐田えりかは、『死体の人』でヒロインを務め、オムニバス映画『無情の世界』の一編「真夜中のキッス」、『朝がくるとむなしくなる』では主演を務めた。やはり彼女はスクリーンがよく似合う。オーバーアクトでもナチュラルな演技でも魅せる。彼女の帰還を心から祝福したい。

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深夜のファミレス。さっきまで血に濡れた手で車のハンドルを握っていた男と、血塗れの服をパーカーに着替えたボサボサの髪のままコーヒー…

 そんな唐田の盟友にして『朝がくるとむなしくなる』で初共演を果たした芋生悠も、実にスクリーンがよく似合う存在だ。ここ数年で一気にその名を知らしめた彼女は、脇に徹してバイプレイヤー的な立ち位置を取ることができれば、主演ポジションで作品の顔にもなれる。唐田も芋生も「映画俳優」として2024年以降も愛されていくのだろう(ちなみに、舞台『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』での芋生の妙演も忘れ難い……)。

北香那&錫木うり

 『春画先生』の北香那、『車軸』の錫木うりも2023年を代表する俳優だと思う。2022年の末に配信が開始された『ガンニバル』(ディズニープラス)に続くかたちで2023年も駆け抜けた北。『インフォーマ』(カンテレ)やNHK大河ドラマ『どうする家康』などで着実にキャリアを重ねながら、現時点での代表作になったであろう『春画先生』が公開された。

 一方、錫木はまだ出演作がそう多くはない俳優で、彼女が主演のひとりを務めた『車軸』でその存在を筆者は知った。錫木はこれから活躍の場が一気に広がることと思うし、同作は彼女の代表作のひとつとして語られ続けていくのだろう。『春画先生』の北も、『車軸』の錫木も、それぞれのヒロインが主体性を獲得し、彼女らが自分自身の人生を突き進んでいくさまを体現している。ふたりのように気高く生きたい。

趣里

 2023年のエンタメシーンを語るうえで趣里の存在はもちろん外せない。現在の彼女は朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)で主演を務め、そのチャーミングな笑顔とパワフルな演技で国民的俳優になりつつある。時を同じくして、主演を務めた塚本晋也監督の最新作『ほかげ』も公開中だ。両作とも描かれている時代は近いが、主人公が置かれている環境はまったく違う。趣里の演技の振れ幅の大きさに驚かされるばかりだ。

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萩原みのり

 最後のひとりは、少し前に引退を発表したばかりの萩原みのりだ。毎年のように出演作を代表作にしてみせる彼女に、筆者は何度かインタビューをしている。そこで彼女の仕事(=演技)に向き合う姿勢に触れるたび、背筋が伸びたものである。演じる役を想う気持ちはもちろん、各作品における自身の立ち位置に関して俯瞰的なのだ。

 2023年の公開作である『君は放課後インソムニア』も『唄う六人の女』も、さまざまなタイプのキャラクターが入り乱れる中、萩原は確実に自身の役割をまっとうしていた。彼女の俳優としての生き様は各作品に収められているのだから、それを大切に、私たちも前を向くしかないだろう。

 以上、2023年に印象深い存在だった女性俳優10名について記してみた。これは迷いに迷った結果である。純粋に演技に感銘を受けたパターンもあれば、それぞれが演じたキャラクターに筆者自身が共鳴したパターンもある。彼女たちからはたくさんの力をもらった。2024年も必死に追いかけていく所存だ。

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