ウィリアム・フリードキン、ジャック・ロジエ、ライアン・オニールら映画人たちを偲んで

ライアン・オニール

 ここからは俳優たちにも触れておきたい。『ペーパー・ムーン』や『おかしなおかしな大追跡』『ニッケルオデオン』と、昨年亡くなったピーター・ボグダノヴィッチ監督と組んだ作品が傑作ぞろいだったライアン・オニール。ここ20年ほどは闘病や逮捕などもあって表舞台で見る機会は少なかったが、70年代には欠かすことのできないスターであったことは変わりないだろう。6月に亡くなったグレンダ・ジャクソンに、7月に亡くなったジェーン・バーキンも、久々にその名前を聞くのが訃報だったことが悲しい。

マシュー・ペリー

 そして10月28日、伝説的シットコムシリーズ『フレンズ』のチャンドラー・M・ビングことマシュー・ペリーの54歳でのあまりにも早過ぎる死。映画は『セブンティーン・アゲイン』でザック・エフロンに若返って以来10年以上出演がなかったが、『フレンズ』1本だけで彼は世界的スターであり、世界中の何千万人もの視聴者にとっては、いつもふざけたことを言っていて何の仕事をしているのかよくわからない最高の友人であったことは間違いない。

 ペリーの死後、いたるところでチャンドラーのベストエピソードが挙げられていたが、個人的にもいくつか挙げておきたい。まずはシーズン4の第6話、ジョーイのガールフレンドのキャシーに恋心を抱き、誕生日プレゼントに彼女のお気に入りの『ビロードうさぎのなみだ』の初版本をプレゼントする。第8話まで続くキャシーへの恋模様と、ジョーイとの友情が胸を打つ。また同シーズンの第15話で、腐れ縁の元カノ・ジャニスと会ってしまい、イエメンに転勤すると嘘をついた挙句に本当に行く羽目になる空港のシーンもチャンドラーらしさが全開。

 もちろんシーズン5以降でモニカとの関係が大きく変化する様は『フレンズ』全体を通しても重要なターニングポイント。シーズン6のフィナーレでのプロポーズの一連も最高だったし、二人が養子縁組の経験者の家を訪ねていくシーズン10の第2話。その家の少年オーウェン(演じているのは『スパイ・キッズ』のダリル・サバラだ)にチャンドラーがうっかり養子であることを漏らしてしまう流れは、そのあとのサンタクロースのくだりも含めて本当に秀逸なものだった。

 ここに挙げた以外にも、多くの監督・俳優、プロデューサー、そして尊敬すべき映画評論家の先生もこの世を去った2023年。作品を生み、伝えて下さった方々に感謝を込めながら、故人たちのご冥福をお祈りします。

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