『SF超大作「三体」』をより楽しむために! 物語を追いやすくなる6つのポイントを解説

『SF超大作「三体」』6つのポイントで予習

 WOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信中のドラマ『SF超大作「三体」』が面白い。各国の優秀な物理学者が、「物理学は存在しない」などの言葉を残して次々に自殺する。その死者の1人、楊冬(ヤン・ドン)の知人でナノマテリアル研究者の汪淼(ワン・ミャオ)が、はみ出し者の警察官・史強(シー・チアン)とともに連続自殺の謎を追う。汪ミャオの目前に数字の列が浮かび減っていくカウントダウンが現れるなど、彼らは怪現象に直面する。そのようにミステリー的でホラー的な導入部にひきこまれるうちに、異星文明と人類の接触という壮大なスケールのSFストーリーへと展開していく。

 全30話のドラマは、劉慈欣(リウ・ツーシン)の世界的ベストセラー『三体』三部作の第一部を実写化したものだ。原作を活かした脚色をしており、不可解な出来事を工夫した映像で巧みに表現している。ただ、北京オリンピック開催直前の2007年の中国を舞台とする物語に、やがて過去の回想や、作中に登場するVRゲーム「三体」の体験場面が挿入され始める。現代、過去、ヴァーチャル空間を行き来する構成で、科学関連用語も多い。そうした部分に戸惑う方もいるだろう。ここでは、ドラマ『SF超大作「三体」』を楽しむための6つのポイントを挙げておきたい。

1. 葉文潔と文化大革命

 自殺した楊冬の母、葉文潔(イエ・ウェンジエ)こそ、物語の重要人物である。物理学者だった彼女の父は、1967年に殺された。当時の中国では国家上層部の政治闘争を背景に文化や思想を厳しく取り締まる文化大革命の嵐が吹き荒れ、密告も横行した。葉文潔の父は、犠牲者の1人だったのだ。彼女自身も矯正のための労働を課され、信じた相手に裏切られるなどつらい経験をした後、ある基地での勤務を命じられる。そんな彼女が抱いた人類への絶望が、物語の鍵となる。

 文化大革命の時代から始まる原作とは異なり、ドラマは現代パートから始まるので、前半に葉文潔はさほど多く登場しない。だが、彼女の存在は要チェックだ。

2. 地球規模の危機

 多くのことが謎のまま、ドラマは進む。ただ、史強が指示を仰ぐ常偉思(チャン・ウェイスー)陸軍少将など中国の軍人たちが、欧米など世界中の軍人たちとリモート会議する場面が、たびたび出てくる。情報を共有し、共同で対策を立てようとしているのだ。その状況は、利害が一致しないことが多い各国が協力しあうしかないほどの、地球規模の危機が迫っていることを暗示する。

3. 射撃主と農場主

 連続自殺と関係があるとみられる学術組織、科学境界(フロンティア)に潜入した汪ミャオは、そこで射撃主と農場主という2つのたとえ話を聞く。

「優秀な射撃主が一定間隔で的の穴をあけた場合、その表面にいる2次元生物はできた穴の間隔を宇宙の法則だと考える」

「農場の七面鳥が、毎朝定刻に餌を与えられ、1年間例外がなかったことを観察し『これは宇宙の法則だ』と仲間たちに発表する。だが、クリスマスのその朝、すべての七面鳥は殺されてしまった」

 2つのたとえ話は、2次元生物にとっての射撃主、七面鳥にとっての農場主のように、人類にとっても自分たちには把握できない超越的ななにかが存在するかもしれないことを示唆する。また、得られる情報からしか組み立てられない科学の限界を示す。それらは、人類に訪れる危機の性格を表現している。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる