『ブギウギ』趣里の透明感ある歌声と共鳴する歌詞 「センチメンタル・ダイナ」を解説
「センチメンタル・ダイナ」の歌詞には〈くよくよするのは やぼな娘よ〉〈歌えよ ダイナ〉〈踊れよ ダイナ〉といった羽鳥からスズ子への当て書きとも取れる言葉が並べられている。あまりにもタイムリーな歌詞だ。直接的には明言されていないものの、羽鳥はスズ子が松永に恋心を抱いていることに薄々気づいていたのだろう。傷心していたスズ子は羽鳥たちが楽曲制作に勤しんでいる姿を見て、うっすらと微笑んでいた。羽鳥が自分のために新たな詞を書いてくれていたという事実が、義理と恋に破れたスズ子にとっては支えとなっていた。「センチメンタル・ダイナ」は恋という人間の普遍的な悩みを乗り越えたスズ子が歌うからこそ価値が生まれる楽曲でもあるのだ。
これまでスズ子が歌ってきた楽曲とは毛色の異なる楽曲を趣里はどのように歌うのか。改めてシヅ子と趣里の歌声に注目してみると、シヅ子は歌劇団出身ということもあり、パワフルなダンスはもちろん、歌声は力強く低音がしっかりしている。にもかかわらず、聴いていると重苦しくなく、むしろ軽快なリズムに乗せて軽やかに歌うのだから驚きだ。対して趣里の歌声は抑揚が抑えられており、原曲よりも柔らかでスーッと耳に入ってくる心地よさがある。すでに披露されている「ラッパと娘」も2人の歌声を聴き分けてみると、楽曲のイメージも異なるものになっている。それぞれ違う良さがあるものの、趣里の透明感のある高音やミドル音域の響きの良さは格別だ。この歌声を聴けばなぜ趣里がヒロインに起用されたのかが分かる。
羽鳥から贈られた「センチメンタル・ダイナ」をスズ子はどう受け止めるのだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK