フー・ゴーはすべて兼ね備えたスターだ! 『仙剣奇侠伝』から現在までの軌跡と円熟

フー・ゴーの俳優としての軌跡と円熟

 さらに、同じ制作陣と、フー・ゴーをはじめ、ジン・ドン、ワン・カイなど『琅琊榜』で人気を博したメインキャストが再び集結して制作されたスパイドラマ『偽装者』(「みるアジア」で配信中)で、その人気を決定的なものにする(本国での放送は『偽装者』のほうが先だが、制作順は逆)。

 物語は日中戦争が勃発した1937年から始まる。フー・ゴーが演じるは、名門・明(ミン)家の末子の明台(ミン・タイ)。大学入学のために香港へ向かう道中、国民党の秘密組織に拉致されて特務の養成学校に強制入学させられるという初回からハードな展開で幕を開けるスパイサスペンスで、特訓を受けた明台はみるみるうちに素質を開花させ、工作員として暗躍するようになる。

『偽装者』© Daylight Entertainment CO.,LTD
『偽装者』© Daylight Entertainment CO.,LTD

 抗日戦争の時代を舞台にしたスパイドラマではあるが、この作品の軸となるのは、明家の血の繋がらない3兄弟の物語だ。彼らが全員優秀で、頭のよさ、身のこなし、ついでにイケメン度に至るまで無双状態。その中でもフー・ゴー演じる明台は、お坊ちゃんらしい愛嬌とユーモアで人を引きつけ、知性をも兼ね備えた愛すべき人物。『琅琊榜』と同じく、どこかフー・ゴー自身の魅力とリンクするキャラクターでもある。

 『偽装者』というタイトルが示すとおり、それぞれに表と裏の顔があり、兄弟ですら互いの正体が分からないまま繰り広げられる駆け引きに、どんどん続きが見たくなる。3兄弟の置かれる立場と、当時の中国の重慶政府(国民党)、南京の親日政権、中国共産党の力関係が鍵になってくるので、少し基礎知識を入れておくとより楽しめるかもしれない。

 人気者が出演し、本国でも高評価を得ていたにもかかわらず、『偽装者』が「みるアジア」での独占配信まで長らく日本に輸入されなかったのは、いわゆる抗日ドラマにカテゴライズされるからだと推測する。確かに日本軍がよく描かれているはずはない。しかし本作に登場する日本側の人物は、一昔前の抗日ドラマのようにおかしな日本語を話すこともないし、中国で活躍する俳優の松峰莉璃さんはじめ俳優たちの演技もキャラクター設計もしっかりしていて、安心して観ていられる。

『偽装者』© Daylight Entertainment CO.,LTD
『偽装者』© Daylight Entertainment CO.,LTD

 揺るぎない人気と地位を獲得したあとのフー・ゴーは、軸足を映画に移す。自身がファンだったという岩井俊二監督が中国で撮った2018年の映画『チィファの手紙』(「みるアジア」で配信中)に主人公の姉の昔のボーイフレンド役で出演。短い出番ながらも、これまでのクリーンなイメージを覆すようなクズ男を印象的に演じている。

 2019年の第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された映画『鵞鳥湖の夜』でも、自身のイメージを払拭するかのようにしがないチンピラ役に挑戦。次第に追い詰められていく裏社会に生きる男のあがきと悲哀を好演した。

 スターであるからには、当然プライベートも注目され続ける。ウェイボーなどで交際や結婚宣言をしたり、まめにプライベート(を演出した)投稿をしたりする中国のスターが多い中、2023年にいきなり娘が生まれたことを発表。妻は一般人とのことで、どこまでも控えめなところがフー・ゴーらしい。

『偽装者』© Daylight Entertainment CO.,LTD
『偽装者』© Daylight Entertainment CO.,LTD

 最近の出演作では、地方の県知事という地味な役柄ながらも優しげなイケメンオーラが隠しきれなかったドラマ『県院大委(原題)』が2022年に放送されて高評価を獲得。2023年9月に公開されたばかりの最新主演映画『耳をかたむけて』では弔文を書くことが仕事の男を演じ、上海国際映画祭コンペティション部門で最優秀男優賞を受賞した(作品は最優秀監督賞も獲得)。本作は2023年の東京国際映画祭でも上映されており、日本での一般公開も期待したいところ。香港映画の巨匠ウォン・カーウァイが監督を務めるドラマ『繁花(原題)』も放送が待たれており、これからもフー・ゴーはまだまだ注目を集めそうだ。

 アイドル俳優時代の輝くような美しさがまぶしい『仙剣奇侠伝』と、人生の転換期を経て、深みと渋みを増した充実期の『偽装者』。いずれもフー・ゴーの代表作だが、これまで日本語字幕付きで紹介されたことがなく、「みるアジア」で待望の独占配信となる。両作品を見比べて、その顔に残された傷痕の有無だけではない、1人の俳優の軌跡と円熟を感じてほしい。

■配信情報
『偽装者』(全41話)
みるアジアにて独占配信中 ※毎週4話ずつ配信予定
出演:フー・ゴー、ジン・ドン、リウ・ミンタオ、ワン・カイ、ソン・イーほか

『風中の縁』(全35話)
みるアジアにて配信中
出演:リウ・シーシー、エディ・ポン、フー・ゴー、ハン・ドン

『チィファの手紙』
みるアジアにて配信中
出演:ジョウ・シュン、チン・ハオ、ドゥー・ジアン、チャン・ツィフォン、フー・ゴー

「射鵰英雄伝<新版>」
11月29日よりみるアジアにて配信予定
出演:フー・ゴー、アリエル・リン、ユエン・ホン、リウ・シーシー、アンソニー・ウォン、チョイ・カムコン、レオン・カーヤン、キャシー・チョウ

■サービス情報
「みるアジア」
韓国・中国・タイBLといったアジアドラマの配給、VIDEO発売業務を手掛ける株式会社コンテンツセブンが運営する動画配信サービス。世界の名作ドラマを語学学習者にもおすすめの二か国語字幕(日本語+原語同時表示のオリジナル字幕)など、独自の字幕で配信している。
https://www.miruasia.com/

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