『ながたんと青と』は“ものづくり”の基本を思い出させる 門脇麦が感じた作間龍斗の成長

『ながたんと青と』が描くものづくりの基本

 門脇麦と作間龍斗が、戦後間もない京都を舞台に15歳差の夫婦を演じた連続ドラマW-30『ながたんと青と -いちかの料理帖-』。そのBlu-ray&DVDが、10月25日に発売された。

 本作は、磯谷友紀の同名漫画を原作にした実写化ドラマ。戦争で夫を亡くした老舗料亭「桑乃木」の長女・いち日(門脇麦)は、家のために実業家の御曹司・周(作間龍斗)と結婚する。そして共に料亭の再建を目指すうちに、本当の夫婦になっていく姿が描かれる。

 時は1951年。戦争が終わり、新しい時代がやってきたとはいえ、すべてが一新されるものではない。特に、伝統と格式を重んじる京都となればなおさらだ。「厨房に女が立つことはありえない」「夫を台所に立たせるなんて笑われる」と、令和を生きる私たちからすると少々理解に苦しむしきたりがまだまだ根づいていた時代。

 「なぜ?」と言われても「そういう決まり」と一蹴されてしまうものほど覆すのが難しいものだ。いち日も、幼少期には純粋な気持ちで「父のような料理人になって『桑乃木』の厨房に立ちたい」という夢を持っていたものの、成長するにつれて「そういう決まり」に縛られていく。

 そんないち日にとって、周との出会いはまさに人生を大きく変えるきっかけとなった。新しい時代を柔軟に生きようとする周は、いち日の料理の腕を見込み「あなたが料理長になるべきだ」と背中を押す。そして、周自身もビジネスパートナーとして「桑乃木」の経営状況を立て直していくと誓うのだった。

 15歳も年が離れていることから、当初はお互いに恋愛対象とは言えない結婚だった。なんなら、それぞれに想い人もいた。しかし、2人で一緒に課題に取り組む日々を通じて、特別な感情が生まれていく。それは、じっくりと丁寧にひかれた出汁のように、じんわりと温かな気持ちにさせてくれるもの。

 そんないち日と周を演じる門脇麦と作間龍斗の演技が見事だった。門脇は、女性の活躍が難しい時代を生きるいち日を清々しく演じてみせる。特に、遠慮のない物言いの周に、ついムキになって言い返してしまう場面は、日頃抑え込んでいた、勝ち気で純粋な少女のようないち日が引き出されているようで、とても微笑ましい。

 1人の女性として、老舗料亭の娘として、料理人として……門脇の目を見れば、いち日がどんな自分の一面と向き合っているのかが伝わってくる。そのくるくると変わる表情が楽しく、ともすれば優しくあっさりとした味に仕上がりそうな本作に、面白い触感を与えてくれるのだ。

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