『ながたんと青と』は“ものづくり”の基本を思い出させる 門脇麦が感じた作間龍斗の成長

『ながたんと青と』が描くものづくりの基本

 一方で、作間演じる周の存在は、例えるならば青と(青とうがらし)のようなピリッとしたアクセント。登場したばかりのころの周はほとんど笑わない。むしろ無愛想で歯に衣着せぬ物言いに、少しイヤなヤツという印象さえある。しかし、それだけではない魅力があることを、セリフや表情というよりも雰囲気から醸し出しているのがニクい。

 特典映像のインタビューで門脇が話していたように、撮影当時の作間は周と同じ19歳だった。そのリアルな年齢を俳優として等身大に演じられるのも、ひとつの縁。門脇も、最初のころは作間に対して手を差し伸べる側というイメージがあったようだが、いち日にとっての周と同じく、撮影が進むに連れてその存在がどんどん頼もしくなっていった感覚があったという。

 19歳の男性というのは、まだまだ顔つきも大きく変わる時期。作間が周という役と融合して成長していく姿がひとつの作品に収められているというのは、今後の俳優人生を振り返る上でも大きな財産となりそうだ。

 また、特典映像の「特別対談 門脇麦×作間龍斗」では、とてもフランクに話し合う2人の姿も確認できた。現場では料理研究家・大原千鶴が監修したおいしい料理が並んでいたことから、「あれもおいしかった」「本当においしかった」と大いに盛り上がる。プライベートでも料理好きだという門脇と、スイーツを作るのが得意な作間。その距離感に「時代が異なっていれば、いち日と周もこんなふうに打ち解けて、共にキッチンに立っていたのではないか」なんて想像してしまうほどだ。

 本作を見ていると、“何かを作って誰かに出す”ことの本質について考えさせられる。「おいしく食べてほしい」と作られる料理には、「元気になってほしい」「幸せを感じてほしい」「好きになってほしい」……という願いが込められている。それは、ドラマを作ることもきっと同じ。作品を観るという行為は、きっと食べることと同じでそれを作ってくれた相手を受け入れることなのかもしれない。

 このドラマには、いち日の料理と同様にその想いが込められているのがわかる。だからこそ、この物語を、出演者を、そして京都という街も、出てくる料理もすべて愛しく思えてくるのだろう。どこか効率的になりすぎてしまった現代に、その丁寧で繊細なものづくりが人生を豊かにするのだと改めて気づかせてくれるような作品だ。ときには、自分のために、あるいは大切な誰かのために、この作品に出てくるレシピを参考に料理を作り、そして繰り返しじっくりとこの作品を味わっていきたいと思った。

■リリース情報
『ながたんと青と -いちかの料理帖-』
Blu-ray&DVD発売中
価格:15,840円(税込)

【映像特典】 ※Blu-ray&DVD共通
・門脇麦×作間龍斗スペシャルインタビュー
・撮影の舞台裏Behind The Scene
・特別対談 門脇麦×作間龍斗
・完成披露試写会
・スポット集

【封入特典】 ※Blu-ray&DVD共通
・オリジナルブックレット

原作:磯谷友紀『ながたんと青と -いちかの料理帖-』(講談社『Kiss』連載)
脚本:川﨑いづみ、弓削勇
監督:松本壮史
音楽:田辺玄、Rachel Abstract
主題歌:Summer Eye「白鯨」
プロデューサー:小髙史織(WOWOW)、森田大児、髙木敬太(東映)
製作:WOWOW、東映
出演:門脇麦、作間龍斗、中村蒼、久間田琳加、白石隼也、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、加藤小夏、菊池亜希子、小野武彦、飯田基祐、床嶋佳子、板尾創路、戸田恵子
©2023 WOWOW/東映

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