『ONE PIECE FILM RED』を“ウタLIVE”上映で味わう Adoを起用した革新性を再評価

『FILM RED』を再評価

 ウタのライブシーンにおいて欠かせないのが歌手・Adoの存在だ。同作が革新的だったのはAdoを起用したところにある。「ニコニコ動画」出身の彼女は2020年に「うっせぇわ」で大ブレイクを果たし、「第63回日本レコード大賞」にて特別賞を受賞するなど、一躍時の人となった。劇中では「新時代」をはじめ「私は最強」や「ウタカタララバイ」、「世界のつづき」など7曲披露しており、さらに驚くべきはその制作陣だ。Mrs. GREEN APPLEやVaundy、澤野弘之といった音楽シーンを牽引するクリエイターを起用し、Adoの魅力が多角的に引き出されている。

 改めて観返してみて感じたのは、ライブシーンに説得力が生まれていたのはAdoの表現力があったからこそということだ。「うっせぇわ」でのエッジが効いた歌声の印象も強いAdoではあるが、声のレンジはかなり広く、多彩な歌声を表現できる。劇中でウタは様々な葛藤を抱えながら、その時々の感情を楽曲に乗せて歌っているが、Adoはウタの感情とリンクするように歌い上げていた。

【FILM RED】『ONE PIECE FILM RED』再上映予告 Encore Trailer/10月20日(金)公開

 前述したようにこれまでの日本のアニメにはライブとの共存が図られてきた。その中では劇中を超えて音楽が世の中に広がるケースも少なくなく、それは『ギルティクラウン』のEGOISTなどが良い例だろう。『ONE PIECE FILM RED』は『ONE PIECE』ブランドをしっかりと保った上で、ライブ演出を取り入れることで、アニメにおける音楽の重要性を再提示してくれた。その意味で同作がアニメ界にもたらした影響は計り知れない。アンコール上映は「ウタLIVE in 映画館」として声出しOKで上映されているいまこそ、『ONE PIECE FILM RED』をもう一度観直すこれ以上ない機会だろう。

■公開情報
『ONE PIECE FILM RED』
公開中
原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:谷口悟朗
脚本:黒岩勉
音楽:中田ヤスタカ
キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅将
美術監督・美術設定:加藤浩
色彩設計:横山さよ子
CGディレクター:川崎健太郎
撮影監督:江間常高
製作担当:吉田智哉
声の出演:田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョー、宝亀克寿、名塚佳織、Ado、津田健次郎、池田秀一、山田裕貴、霜降り明星(粗品、せいや)、新津ちせ
主題歌:「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」Ado (ユニバーサル ミュージック)
劇中歌 楽曲提供: 中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦基博
配給:東映
©尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会
公式サイト:onepiece-film.jp
公式Twitter:@OP_FILMRED

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