『ゼイチョー』が挑んでいる物語的な“チャレンジ” 菊池風磨のアドリブ演技が尊いワケ

『ゼイチョー』が挑んでいる“チャレンジ”

 さらに相楽は華子の母の再婚相手の連れ子で、その後に両親は離婚している。つまり一時期、相楽と華子は血縁関係のない兄と妹だった。その後母子家庭となった華子は貧乏で苦労するのだが、相楽なりに華子のことを影で応援していた、あるいは見捨てた後ろめたさも今回の出向に関係していそうだ。あえて“血縁関係がない”という複雑な設定にしたのは、恋愛感情も絡んでくるからだと予想。

 まだ始まったばかりなので、特にお互いがアクションを起こしておらず、共闘なのか対立なのかまだ分からない。いずれ3人が結託して、極悪滞納者か市長なのか、何か巨大な敵に立ち向かう展開になったら胸熱な展開になるだろう。そしてそこまでの対立関係を作り上げてから、お互いが過去と向き合い、誤解を解くような展開になるのだとしたら、ドラマはかなり面白くなってくるはずだ。

 一方でドラマを観ていると気になる点も少なくない。たとえば第2話で、年金受給者と生活保護者に関して、我々が支払う税金で遊ぶことに納得のできない女性の話で、それらを混同してしまうのは税の知識のない人には仕方のないことかも知れないし、若い人にとっては実際そう考える人がいる方がリアルなのかもしれない。納税を描く専門的なドラマであるならば、システム自体の説明や、誤解を招かないように最後に饗庭から何かフォローがあってほしいところで、ネット上の感想でもそこに引っ掛かっている人は多い。

 また、「ほかにも方法があるだろう」と思うこともあるが、やはり市役所納税課ができることには限界があるのだ。その中で解決方法を見出すというのは、実はかなり縛られたルールの中でチャレンジしている作品だったりする。そのことを考えると、納税にまだ関心が薄い10代も観るドラマなので、今のところ説明不足なのは否めず、魅力が伝わりきっていないかもしれない。とはいえ今作は勉強をするドラマにしたいでのはなく、“なぜ払いたくないのか”を追求し、心の解決を描きたいのだろう。人間模様や「ゼイチョー」のチームワークを楽しむドラマとして観るのがいいのかもしれない。

 いずれにせよ、税金のあり方について今一度考え、調べるきっかけになるドラマなのは間違いない。賛否両論あわせて、ネット上で様々な議論が起こること自体が、制作側の意図していることなのかもしれない。

■放送情報
『ゼイチョー 〜「払えない」にはワケがある〜』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:菊池風磨(Sexy Zone)、山田杏奈、本郷奏多、石田ひかり、石野真子、結木滉星、市川由衣
原作:慎結『ゼイチョー!〜納税課第三収納係〜』(『BE・LOVE』講談社)
脚本:三浦駿斗
演出:河合勇人、鯨岡弘識ほか
音楽:井筒昭雄、chakia
監修:野村修也
税務指導:堀博晴
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:大倉寛子、岩崎秀紀、金澤麻樹
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/zeicho/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/zeicho_drama
公式Instagram:https://www.instagram.com/zeicho_drama/

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