『マイ・セカンド・アオハル』道枝駿佑の笑顔の破壊力 広瀬アリスのコミカルな表情が光る

『マイ・セカンド・アオハル』拓の笑顔

「このまま一生、消化試合みたいな人生送るつもり?」

 このセリフにドキッとしない大人は少なくないのではないだろうか。でも、今さら何を変えられるというのだろうか……。必死に現状維持しながら生きる令和の大人たちにとって「人生やり直し」は切なる願いだ。だからこそ、エンタメの世界では「転生モノ」や「タイムリープモノ」が流行っているのかもしれない。しかし、その願いはもしかしたら現世を終了なんてさせなくとも、あるいは摩訶不思議な能力が突然降りかかるのを待たなくとも、少しの勇気と現実的なお金さえあれば叶うのかもしれない。そう背中を押してくれるドラマが始まった。火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』(TBS系)だ。

 タイトル通り、本作は主人公・佐弥子(広瀬アリス)が30歳にして大学生となり、かつて手に入れたかった青春時代を全力で取りに行く物語。大家族の長女に生まれた佐弥子は、高校を卒業したら当たり前のように家業を継ぐものだと思っていた。しかし、教師から進路相談の際に「本当にそれが自分のやりたいことなのか」と問われたことで、ずっと興味を持っていた建築の世界を目指して大学受験を決意する。ところが、受験当日の朝にまさかの大転倒。両手両足を骨折するという不運に見舞われ、大学生生活は断念せざるを得なくなった。

 それでも自分の人生を切り開こうと上京は果たしたものの、派遣社員として12年目を迎えようとしていた。やりたいことに全力で向き合えているわけでもなく、かといって贅沢をしなければ生活はしていけるという生殺し状態で続けてきたOL生活。「何者にもなれなかった」という閉塞感と、この先「何者かになれる」という希望を持つこともできない絶望感。そして、日々をこなしていくだけの疲労感が積もりに積もった矢先、来月で契約終了と告げられてしまい、まさに崖っぷちの状態に。

 しかし、佐弥子の人生を変えるラストチャンスが訪れる。それは、落としたスマホを拾ってくれた大学生・拓(道枝駿佑)との出会いだった。拾ってくれた御礼としてコンビニで缶ビールを買って乾杯した2人は、少しだけ心を開いて会話をする。すると、じゃんけんで“グリコ”遊びをしながら、なんとなく佐弥子が大学への未練を話すと、拓は「なればいいじゃん、大学生」とサラッと言ってのけるのだった。そして「このまま一生、消化試合みたいな人生送るつもり?」と。

 その言葉が佐弥子にはキツかった。人は弱っているときに正論で返されると、より一層苦しくなる。それは、逃げ道がなくなってしまうから。飲んで、愚痴って、逃げながらなんとか生きてきた佐弥子にとっては、拓のまっすぐな提案はあまりにも眩しすぎた。でも、心のどこかでは拓と同じように「なればいいじゃん」と言ってくる自分もいたのかもしれない。ただ大人になると、「なれるわけないじゃん」と変化を諦めさせる自分の声がどんどん大きくなるものなのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる