村上春樹の短編をアニメーション映画化 『めくらやなぎと眠る女』2024年初夏公開
村上春樹の短編小説をピエール・フォルデス監督が長編アニメーション映画化した『めくらやなぎと眠る女』が、2024年初夏にユーロスペースほかにて劇場公開されることが決定した。
本作は、音楽家でアニメーション作家のピエール・フォルデスが村上春樹の6つの短編(『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFO が釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』)を翻案した作品。村上春樹作品がアニメーション映画化されるのは本作が初となる。
2011年の東京。東日本大震災から5日後、刻々と被害を伝えるテレビのニュースを見続けたキョウコは、置き手紙をのこして小村の元から姿を消した。妻の突然の失踪に呆然とする小村は、図らずも中身の知れない小箱を女性に届けるために北海道へと向かうことになる。同じ頃のある晩、小村の同僚の片桐が家に帰ると、そこには2メートルもの巨大な「かえるくん」が彼を待ち受けていた。かえるくんは迫りくる次の地震から東京を救うため、こともあろうに控えめで臆病な片桐に助けを求めるのだった。めくらやなぎ、巨大なミミズ、謎の小箱、どこまでも続く暗い廊下、大地震の余波は遠い記憶や夢へと姿を変えて、小村とキョウコ、そして片桐の心に忍び込む。人生に行き詰まった彼らは本当の自分を取り戻すことができるのだろうか。
フォルデスにとって初の長編アニメーションとなり、2022年6月にアヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映された本作は、同映画祭で審査員特別賞を受賞。今年3月に新しく始まった新潟国際アニメーション映画祭では第1回グランプリを受賞した。
同映画祭の審査員を務めた押井守は、本作の受賞理由として「現代文学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3人の審査員の意見が一致した、唯一の作品」とコメント。監督自らが音楽も手掛ける本作は、レザルク・ヨーロッパ映画祭作曲賞を受賞したほか、世界各国の映画祭に出品され高い評価を得ている。『めくらやなぎと眠る女』は、監督が「ライブ・アニメーション」と名付ける実写撮影をベースにしたアニメーション制作技法で作られており、村上春樹作品の不思議かつ生々しいリアリティを再現している。
なお、フォルデス監督は10月28日に早稲田大学国際会議場で行われる国際シンポジウム「世界とつながる日本文学〜after murakami〜」にパネリストとして、また11月5日にはコンペティション長編部門に選出された第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭での本作上映にゲストとして登壇することが決定している。
ピエール・フォルデス コメント
『めくらやなぎと眠る女』が日本で公開されると聞いて、とても幸せな気分です。この映画は、純粋なひらめきと野心の両方から生まれましたーー史上最も偉大で最もインスピレーションに溢れた作家の作品から得たひらめきと、アニメーションにおいてテクニックだけではなく語り方をも一新しようとした野心の産物なのです。様々な物語とキャラクターを絡み合わせつつ、この映画は、様々な物語とキャラクターを絡み合わせつつ、2011年の地震と津波という大きな出来事が、登場人物たちをいかに目覚めさせ、自分の人生を生きようと試みさせるのかを探っていきます。私が村上春樹の小説を読んでいるときに感じたような、そしてこの映画を作っているときに感じたような大きな刺激を、観客に感じてほしいと思っています。私にとってこの映画は、控えめに言っても近年作られた最も革新的な長編アニメーションなのです。この映画が、優れたアニメーションを生み出すことで知られた国で公開されることに興奮しています。私はこの映画の脚本を、新幹線の中でお弁当を食べながら書き終えたのですから、なおさらです!
■公開情報
『めくらやなぎと眠る女』
2024年初夏、ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本:ピエール・フォルデス
原作:村上春樹(『かえるくん、東京を救う』、『バースデイ・ガール』、『かいつぶり』、『ねじまき鳥と火曜日の女たち』、『UFOが釧路に降りる』、『めくらやなぎと、眠る女』)
声の出演:ライアン・ボンマリート、ショシャーナ・ビルダー、マルセロ・アロヨ、スコット・ハンフリー、アーサー・ホールデン、ピエール・フォルデス
配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー
2022/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作/原題:Saules Aveugles, Femme Endormie/英題:Blind Willow, Sleeping Woman
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