『単身花日』はオシドラサタデー枠の“問題作”に? 重岡大毅が体現する舜の複雑な感情

『単身花日』オシドラサタデーの“問題作”に

 “初恋”と聞いただけで、特別な相手を連想してしまうのはなぜだろう。物語でも、初恋というのは登場人物の気持ちに説得力を持たせるために使われることが多い。近年の作品だと、『First Love 初恋』(Netflix)や『silent』(フジテレビ系)が挙げられるだろうか。長年の時を経ていても、すぐに気持ちが“あの頃”に戻れるのは、初恋が特別なものだから。「そんなに会っていなかったら、相手のことなんて忘れちゃってるんじゃないの?」なんて思いながらも、最終的に結ばれる2人を見ると「やっぱり初恋は強いなぁ」と感心してしまうのだ。だから、“初恋は、殺しておかなければいけない”。

 10月14日にスタートした『単身花日』(テレビ朝日系)は、初恋を殺さないまま大人になってしまった桜木舜(重岡大毅)の物語だ。本作は、妻子を残して地元・鹿児島に単身赴任することになった舜が、初恋の人との“危険な快楽”にのめり込む様子を描いていく。オシドラサタデー枠で放送されるのは、『消えた初恋』や『コタローは1人暮らし』、『鹿楓堂よついろ日和』など癒しの作品が多いため、30代の男女が禁断の四角関係を発展させていく『単身花日』は、ある意味“問題作”とも言えるだろう。

 そんな本作で、主演を務めるのが重岡大毅だ。無邪気な笑顔でケラケラ笑い、いつまでも少年心を忘れない……そんなイメージが強い彼は、『これは経費で落ちません!』(NHK総合)の山田太陽や、『#家族募集します』(TBS系)の赤城俊平、『宇宙を駆けるよだか』(Netflix)の火賀俊平など、自身の強みをフルパワーに生かした“ハマり役”を数多く手繰り寄せ、実績を積んできた。とくに、映画『溺れるナイフ』(2016年)の大友勝利なんかは、重岡が演じたからこそ魅力的に昇華されたキャラクターだと思う。

 そして、役者としての幅を広げたのが、昨年放送のドラマ『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系)。“明るく無邪気”な表情を封印して挑んだサブサスペンスで、重岡は新たな強みを獲得したのだ。『単身花日』の舜も、いい奴に見えるけど、心の底からいい奴にはなりきれない。そんな複雑な感情が、主題歌「絶体絶命」のAメロ<いい人とか呼ぶなって 僕はそんないい奴じゃない/そこ止まりの人と ラベルを貼るのはやめろって>に表れていたように感じた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる