『まなみ100%』は“諦めきれない”男の映画だ 川北ゆめき監督が贈るピュアな男の人生譚

『まなみ100%』は諦めきれない男の映画だ

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、中学も高校もバスケ部の副部長だった間瀬が『まなみ100%』をプッシュします。

『まなみ100%』

「今日、ずっと好きだったあの人が結婚してしまうーー」

 予告編がそんな1文から始まる本作は、2010年の高校1年生から10年後に同級生の“まなみちゃん”が結婚してしまうまでを描く。主人公の“ボク”は高校時代から女の子が好きで、チョロいからいろんな女の子に気移りして、でもやっぱりまなみちゃんのことが好きで、でもそんな自分に100%素直になることができなくて調子に乗っちゃって、でもやっぱり好きで……。

 これは1994年生まれの川北ゆめき監督の実話をもとにした物語。そしてそんな物語を同じく1994年生まれの筆者が観て身悶えする。「監督分かってるじゃないか……“ボク”は、ここにもいました……」と伝えたくなった。同年代にそう思わせるくらいに、本作は赤裸々に1人の男の人生を描いている。そして監督はとても素直でピュアな人だということが画面からありありと伝わってくる。切実で、恥ずかしくて、それでもリアルな人生をこんなにもまっすぐ映し出すなんて。

 たとえば悪いことをしたせいで先生に怒鳴られて、納得できなくて反抗してみるところ。高校生の時には自分の中に言葉を持っていないから、行動でしか示せなくて、自暴自棄になるしかない……。そんな“ボク”の様子に、若き日の自分を重ねてしまった。

 だが、この映画の白眉なところは、そうした情景をカット割だけで表現しきっている点にある。もちろん俳優たちの好演は言わずもがな、それを最大限活かしている映像表現が素晴らしいのだ。自暴自棄になった直後に合唱しているまなみの姿をクローズアップするあのシーン、好きな女の子が高らかに歌う様子を神聖な感じで演出できるのは、実際にその感情を体験した人だけだろう。

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