『ハヤブサ消防団』はまるで『ミッドサマー』? 山あいの集落のカルト教団の恐ろしさ
都会の生活に疲れたミステリ作家の三馬太郎(中村倫也)が、山あいの小さな集落・ハヤブサ地区に移り住み、地元の消防団に加入したのを機にさまざまな怪事件に遭遇している『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)。ついに連続放火犯が判明したが、「事件解決だ!」と素直に喜べないくらいハヤブサ地区は不穏な空気に包まれている。
その理由は、なぜかハヤブサ地区に集結した新興宗教・アビゲイル騎士団の後継団体、聖母アビゲイル教団の人たちの存在だ。この人たち、とにかく異様なのだ。地元民の憩いの場になっている居酒屋・さんかくを満席状態にするくらい大勢で集まった彼ら。それは喜ばしいことなのだが、料理の味を絶賛していたひとりが「(店の名前を)サンカクじゃなくてマルに変えたらどうですか?」と言い放った。それに常連の勘介(満島真之介)は思わず「マルなんかダッセえわ」とこぼす。大勢でやってきたよそ者が好き勝手なことを言うのだから、当たり前の文句である。しかしそれによって店内は急に静まり返り、険悪なムードに。どうやらアビゲイル教団の人々は「まる」という言葉に強いこだわりがあるようなのだ。
それに彼らは必ず「紫」のものを身につけている。このとき、さんかくに集った人たちは紫色のものを身に着けていた。思い返せば、太郎のサイン会に現れたアビゲイル教団の弁護士・杉森登(浜田信也)も紫のネクタイを身につけていたし、消防団みんなで食事をした高級レストランを省吾(岡部たかし)が出ていったとき、彼を追うようにしてレストランを出た男女も、紫のアイテムを身に纏っていた。
少し話題が逸れるのだが、本作は大ヒットドラマの『半沢直樹』シリーズ(TBS系)や『下町ロケット』(TBS系)と同じく池井戸潤の作品が原作だ。池井戸のドラマ化作品といえば、全体的に画面が暗めで、人物にこれでもかと寄ってみせるイメージがある。しかし本作はその逆で、いつも全体的に白っぽい印象を受けないだろうか。山あいの小さな集落に、縁もゆかりもなかった人が突然やってくる。そこに集う狂信的な“何か”を抱いた人たち。そして映像の質感。これらに映画『ミッドサマー』(2019年)を思い出し、ゾッとした気持ちになった。