『らんまん』陳志明役・朝井大智と台湾の深い縁 怪しくも憎めない役柄が持ち味に
朝井が神木と流暢な台湾語での掛け合いを見せたことに驚いた人も多かったことだろう。実は朝井は、2019年に日本で活動し始める以前は、台湾を拠点に活動をしていた。そのルーツも台湾にあり、台湾では有名な清朝時代からの富豪・台湾五大家族のひとつ、霧峰林家の末裔にあたるのだという。先祖には軍人や貴族議員を務めた著名人もおり、朝井は2015年に台湾映画『阿罩霧風雲II:落子(原題)』にて主演の曽祖父に当たる林資鏗役を演じたこともある。
最近では、他にも『ドクターホワイト』(カンテレ・フジテレビ系)や『クロサギ』(TBS系)といった話題作に次々に出演している朝井。その役どころは、ドクターチームのひとりをいきなり引き抜こうとしたり、上海の闇社会に精通していたりと今回の志明のようにやや不吉なものが多い。だが、どのキャラクターにもどこか憎めないところがあるのは、そこに真面目さや優しさを感じさせる朝井の本来の人柄が滲み出てくるからだろう。
志明は山の中で倒れた万太郎を看病しながら、台湾語で「ピストルは持っていなかったのか」とつぶやいた。それまで志明にとって万太郎は「祖国を占領してきた国の人」であり、何をされるか分からない「敵」だったのだ。睨みつけるようなあの表情は「やられたらやり返す」というような警戒の表情だったのかもしれない。しかし、その誤解を解いたのは寿恵子(浜辺美波)が持たせた日本植物志図譜だった。それを見た瞬間、志明は、万太郎が台湾を訪れたのは純粋に植物のためであり、台湾語で話しかけたのにも悪意はなく本当に自分たちと心を通わせたかったからだと悟るのである。
それらの万太郎に抱く複雑な感情の変化を言葉少なく、表情で表現してみせた朝井。もっといろんなドラマや映画でその演技を見てみたいと思わされた。朝井の今後の活躍に期待したい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK