『バカ塗りの娘』堀田真由が青森での撮影を語る 「津軽塗を通して何を感じてもらえるか」

『バカ塗りの娘』堀田真由らが語る撮影裏話

 9月1日より全国公開される堀田真由主演映画『バカ塗りの娘』が8月25日に青森県で先行公開されたことを記念して、8月19日にABA青森朝日放送にて放送された映画『バカ塗りの娘』の特別番組がYouTubeで公開された。

 本作は、第1回「暮らしの小説大賞」を受賞した髙森美由紀の小説『ジャパン・ディグニティ』(産業編集センター刊)を映画化したもの。『過ぐる日のやまねこ』『まく子』の鶴岡慧子が監督を務めた。

 海外では漆器が「japan」と呼ばれることもあるように、世界から注目を集め、称賛される漆塗り。本作はその中でも、青森の伝統工芸・津軽塗=通称“バカ塗り”をテーマに描かれる。何をやってもうまくいかず、自分に自信が持てない美也子(堀田真由)が、津軽塗職人の寡黙な父・清史郎(小林薫)との暮らしの中で、幼い頃から触れていた津軽塗に改めて向き合い、次第に自分の進む道を見つけていく。

津軽塗が繋ぐ 父娘の物語 映画『バカ塗りの娘』

 公開された特別番組の映像は、8月4日に行われた弘前ねぷたまつりに堀田と鶴岡監督がサプライズ参加した様子や、ロケ地での堀田や鶴岡監督らの津軽塗、そして堀田が本作への想いを語る場面から始まる。さらに、青森で行われたインタビューで堀田は「津軽の魅力、そして津軽塗を通して何を感じてもらえるかというところを是非注目していただければ嬉しい」とコメント。小林は「演技に逆に目が向かないくらいの津軽のお父さんに見えたらいいなという思いでやった」と語った。また、鶴岡監督も「津軽塗というものを知っていただきたいし、純粋なモノづくりへの形みたいなものが存在しているような気がしていて、そこに気づいていただけたら嬉しい」と作品に込めた想いを語った。

 撮影初日は、主人公・美也子がスーパーマーケットで働くシーン。地元ではお馴染みの店舗が実際に使用され、堀田が津軽弁指導のスタッフと共に津軽弁のセリフに奮闘する姿も確認できる。そして、カメラを向けられた堀田が「難しいよ」と心の声を漏らしながらも笑顔を見せる様子が映し出されている。さらに、美也子たちが住む青木家での撮影シーンでは、堀田らの演技を間近で見た原作者の髙森美由紀が 「瑞々しくて仕草のひとつひとつに主人公・美也子の繊細な感じとか優しい感じが随所に出てて素敵な役者さんだなと思って拝見してました。ぴったり、いやもうそれ以上です」と語っている様子も映し出されている。

 また、本作の魅力のひとつとも言えるのは、青森にゆかりのあるキャスト陣の出演。青森県出身の木野花、坂本長利らベテラン俳優陣に加え、弘前市を中心に歌手・タレントとして活躍するオダギリユタカ、黒石市出身の田中惠土の姿も。さらに、バラエティ番組で引っ張りだこ、弘前市出身で元りんご娘のメンバーである王林も登場する。結婚式場のスタッフを演じた王林は、「一生懸命盛り上げていきます」とガッツポーズとともにコメント。撮影間の映像では、堀田や小林と談笑したり、津軽弁のイントネーションについて話す様子も映し出されている。撮影を終えて王林は「すごい楽しかったです。私が普段暮らしている以上に弘前を感じる撮影になっていました」と語った。そして、同い年で誕生日も近いことが判明した堀田について「出ている番組も観てくれているみたいで、女優さんとの会話とは思えない1人の女と1人の女の会話をさせてもらった」と撮影を振り返った。さらに、「津軽塗だけでなく、青森愛も詰まっている作品。全国の皆さんに観て欲しいです!」とも。また、特別養護老人ホームのスタッフ役として撮影に参加した元りんご娘のメンバー・ジョナゴールドは、「質のいい津軽弁が飛び交っているというか、これぞ青森だよなというのも感じるので、スクリーンを通してどう伝わるのか気になる」と本作の手応えを語った。

 美也子の兄を演じた坂東龍汰と、その恋人役を演じた宮田俊哉(Kis-My-Ft2)の撮影間の映像も公開。初めての共演となった2人は「メンバーとやるのとまた違う感じはあって最初 緊張しました」と話す宮田に対し、坂東は「“ウェイ!”みたいな感じで宮田さんが来てくれてテンション高っ!と思ったけど嬉しかった」と共演初日の雰囲気を振り返った。

  改めて撮影を終えた堀田は「津軽弁も漆塗りの所作もあったので、やり切ったぞという達成感でいっぱいです。壮大かもしれませんが、漆は人生に重ねられるなと思っていて、色を重ねたり時にはそぎ落としたり自分の人生のようで、坂本さん(祖父役)が言っていた“やり続けること”というセリフが、美也子だけでなく自分自身にも大きなメッセージをいただいたように感じていて、この役者という仕事をやり続けてやり続けてまた皆さんと再会できるように頑張ります」とコメントした。

 あわせて、様々な分野で活躍する青森出身の著名人からコメントが到着。弘前市出身の画家・彫刻家である奈良美智は、「同級生にふたり、 津軽塗の息子がいた。ふたりとも長男だったが家業を継がなかった。伝統工芸の伝承は全国的に危機にあり、主人公の物静かな娘も消極的に父を手伝っていたのだが、ある日から顔を上げ津軽塗の未来を見つめるようになる。ゆっくり時間が流れる弘前の風景に演者が溶け込み、物語は津軽塗だけではなく家族の結びつきも考えさせてくれる」と自身の経験を交えながらコメント。また、青森県出身の映画ライター・月永理絵は、「塗っては研ぐ、をひたすら繰り返す漆塗りという作業が、これほど激しくも軽快な音を立てるのだと初めて知った。その果てしない音の重なりが、言葉によって通じ合えない人々を再び繋ぎ合わせる。これは音による再生のドラマかもしれない」と語っている。

コメント

奈良美智(美術作家)

同級生にふたり、津軽塗の息子がいた。ふたりとも長男だったが家業を継がなかった。伝統工芸の伝承は全国的に危機にあり、主人公の物静かな娘も消極的に父を手伝っていたのだが、ある日から顔を上げ津軽塗の未来を見つめるようになる。ゆっくり時間が流れる弘前の風景に演者が溶け込み、物語は津軽塗だけではなく家族の結びつきも考えさせてくれる。

月永理絵(ライター・編集者)

塗っては研ぐ、をひたすら繰り返す漆塗りという作業が、これほど激しくも軽快な音を立てるのだと初めて知った。その果てしない音の重なりが、言葉によって通じ合えない人々を再び繋ぎ合わせる。これは音による再生のドラマかもしれない。今を変えること、一歩を踏み出すことに年齢やタイミングは関係ない。いつだってチャレンジが出来る。美也子がひたむきに漆へと向き合う姿に明日を生きるためのエールをもらいました。

木邨将太(青森朝日放送 アナウンサー)

  今を変えること、一歩を踏み出すことに年齢やタイミングは関係ない。いつだってチャレンジが出来る。美也子がひたむきに漆へと向き合う姿に明日を生きるためのエールをもらいました。

澤田愛美(青森朝日放送 アナウンサー)

 当たり前だと思ってきた伝統が、ひとりひとりの可能性を狭めてしまっている場合があると気がつきました。美也子の挑戦が、女性である私の背中を押してくれました。

ミク(モデル・リポーター・ABA 見っとナイト MC)

青森の景色、津軽塗ができていく過程、家族の絆、一つ一つが丁寧に美しく描かれていました。なにより、主人公の美也子が「やりたい事」を見つけ、真摯に向き合う姿がかっこよかった。一つの事をやり続ける事は思っているよりも難しいです。急速に変化するこの時代。 そんな中で伝統工芸品である津軽塗の尊さを改めて感じた作品でした。

佐藤浩孝(Café MouLin Rouge (映画『いとみち』津軽メイド珈琲店料理監修))

父と娘の対話にも聞こえる作業の音が静寂の中に心地よく響き渡る一 何度も塗りと削りを繰り返す津軽塗と、出会いと別れを繰り返し成長する人間は似ている。一人一人の出演者が津軽塗の模様となり、津軽塗は一人の出演者のような存在感を放つ。鶴岡監督の丁寧な画作りは見事で、一つ一つの工程を丁寧にこなす主人公のそれと重なる。バカ撮りの娘である。

■公開情報
『バカ塗りの娘』
9 月 1 日(金)全国公開
出演:堀田真由、坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、酒向芳、松金よね子、篠井英介、鈴木正幸、ジョナゴールド、王林、木野花、坂本長利、小林薫
監督:鶴岡慧子
脚本:鶴岡慧子、小嶋健作
原作:髙森美由紀『ジャパン・ディグニティ』(産業編集センター刊)
製作:「バカ塗りの娘」製作委員会
制作プロダクション:アミューズ 映像企画製作部、ザフール
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
©2023「バカ塗りの娘」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/bakanuri-movie/
公式X(旧Twitter):@bakanuri_movie
公式Instagram:@bakanuri_movie

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