『君たちはどう生きるか』制作スタッフが語る、ドルビーシネマで実現した宮﨑駿の理想
こうなると、過去のジブリ作品もドルビーシネマで観たいところだが、スタジオジブリとしてそうした過去の作品のリマスターなどに前向きかは経営に関わってくる話となるため、古城も奥井も詳細には触れなかった。ただ、もしも過去の作品の制作中に、ドルビーシネマという選択肢があったとしたら、奥井は「すべて作り直したいですね」と話し、古城も「『千と千尋の神隠し』のドルビーアトモス版が観たいです」と訴えた。過去の名作が4K化されて劇場上映される時代だけに、ジブリにも挑んでほしいと思うファンも多そうだ。
デジタル化によって透過光や階調の幅といった表現部分が制約を受ける一方で、彩色や効果といった部分でデジタル化がアニメの表現にもたらした効果は少なくない。ドルビーシネマなら、そうした光や階調の表現面でのハンデを少なくできる。奥井も「いろいろな表現を作る意味では、デジタルの方が広い」と指摘し、アニメ制作におけるデジタル化をポジティブにとらえている。
ただ、ドルビーシネマに使われているHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)の映像を作るためには、「チェックするためにモニター環境が必要で、お金がかかる。それなりの投資が必要となる」と奥井。普及に向けて「ハードルが下がるようにしてほしい」と、技術を提供しているDolby Japanにお願いしていた。
また、どれだけ技術が発達しても、「技術はツールであって、ツールが使いたいがために演出からかけ離れてはいけません。監督の演出に合わせて、使わないことを引き算によって選択する自制心を保つことが大事ですね」と古城。新しい技術が自在に使えるようになっていく環境で制作を行うことになる、これからのクリエイターに向けて、心構えを話していた。
■公開情報
『君たちはどう生きるか』
全国公開中
出演:山時聡真(眞人)、菅田将暉(青サギ ・ サギ男)、柴咲コウ(キリコ)、あいみょん(ヒミ)、木村佳乃(夏子)、木村拓哉(勝一)、大竹しのぶ(あいこ)、竹下景子(いずみ)、風吹ジュン(うたこ)、阿川佐和子(えりこ)、滝沢カレン(ワラワラ)、國村隼(インコ大王)、小林薫(老ペリカン)、火野正平(大伯父)
原作・脚本・監督:宮﨑駿
主題歌:米津玄師「地球儀」
製作:スタジオジブリ
配給:東宝
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