久保史緒里、乃木坂46と俳優の“夢”を追い続けて思うこと 「“好き”に純粋でいたい」

久保史緒里が語る、アイドル&俳優の現在地

 伊藤沙莉が主演を務める映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』に、乃木坂46の久保史緒里が出演する。歌舞伎町にある喫茶店「カールモール」に訪れる常連のキャバ嬢・絢香役を担当し、光と闇が入り混じる心情を見事に表現している。デビュー以来、舞台のみならずドラマに映画と出演作を重ね、表現力にも定評のある久保は今作ではどのように役作りをしたのか。

<名もなき若者よ 夢ならここにある>

 そして乃木坂46に憧れグループに加入して早7年、乃木坂46のアンセムとも言える「乃木坂の詩」でも歌われる“夢”を追い続ける久保。アイドルと俳優としての活躍を振り返りつつ、いま心からやりたいと思うことは何なのかを聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「自分だけはこの絢香という人間に常に寄り添っていないといけない」

乃木坂46 久保史緒里

ーー映画出演は昨年の『左様なら今晩は』に続き今回で2作目となります。久保さんは本作全体の魅力についてどのように感じていますか?

久保史緒里(以下、久保):内田(英治)監督と片山(慎三)監督の本当に好きな世界観を詰め込んだ映画だと思っています。歌舞伎町に住むいろんな人の物語を追っていて、何個もの作品が重なり「これが歌舞伎町なんだな」と感じられる。そしてそれぞれの監督の“らしさ”がすごく詰まっていると思いました。

ーー久保さんが気に入った部分はどこでしたか?

久保:好きなシーンはいっぱいあります。特にマリコ(伊藤沙莉)が営む喫茶店「カールモール」に、常連のメンバーが飲みに集まるところ。みんながマリコとお話したりしていて、あの空間がすごく好きでした。

久保史緒里

ーー「カールモール」の空間や人々が集まる感じ、とてもかわいいですよね。

久保:内装がすごく素敵で、私も「カールモール」で撮影しましたが、すごくゆったりした感じがしました。

ーー久保さん演じる絢香もあの空間にとても馴染んでいたように思います。役作りのところで、以前『左様なら今晩は』のときには「もっと役に寄り添いたかった」とお話されていました。今は役に対して、どのようにアプローチされていますか?

久保:演じる役がどんな役柄であろうと、一番理解してなければいけないのが自分で、一番味方でいなければいけないのも自分だと思っています。特に本作での絢香という役は、ものすごくピュアで、だけど空回りする人間でもあります。うまく転んでいかない人生に、本当に人生を放棄したくなる感じもあったのですが、それでも自分だけはこの絢香という人間に常に寄り添っていないといけない。そういう意志や気持ちを強く持って挑みました。

乃木坂46 久保史緒里が語る、芝居への情熱 「人間として一番“生きてる”と実感する」

2022年、乃木坂46の久保史緒里は大きな飛躍を遂げた。『乃木坂46のオールナイトニッポン』の2代目パーソナリティに就任し、『桜…

ーー今回演じる絢香はキャバ嬢役でしたが、久保さんにとって役作りとはやはり気持ち作りの面が大きいのですね。

久保:そうですね。今回の映画でキャバ嬢として働く絢香の場面は描かれてはいないんですけど、どういう感じで働いているかは監督とも結構話しました。きっとキャバ嬢の中でもうまくいってないのだと思います。歌舞伎町に憧れてやってきたけど、何もかもがうまくいかない。そんな不器用な人間なんだろうという解釈や話をしていました。とはいえ、自分の全く知らない世界で生きている役だったので、お話を聞いたとき自分にこの役が来るんだってビックリしたんです。同時に、今までやったことのない役ができる嬉しさがあり、台本を読みながらすごく想像を膨らませてました。絢香という人間が、1つずつ選択を重ねて最後の決断に至ったと思うのですが、もしその選択の1つが違ったらどういう人生だったのか。そこにすごく興味があり、考えて演じました。

乃木坂46 久保史緒里

ーーそうしてお話を聞くと、乃木坂46に憧れて宮城県から上京してきた久保さんと結構繋がるところがありますね。

久保:それは私もすごく思いました。自分も夢を持って東京に出てきたので、その中でうまくいかないこととかもいっぱいありました。だけど自分にはメンバーがいたし、ファンの方々など自分という存在を肯定してくれる人が近くにいたので、今があります。絢香にとってその存在は、きっと「カールモール」の常連のよく会うお客さんだったのかもしれない。だけどどこかで孤独を感じてしまう部分もよく理解はできたので、苦しかったです。

ーー絢香には、本当の意味での“近い存在”がいなかったんですね。

久保:そうですね。たぶん人に頼るとか、そういうこともきっとできない。心の中では孤独だったんだろうなと思いました。

内田英治監督から学んだ映画の繊細さ

ーー先日上演された舞台『桜文』での迫真の演技にはとても感動しました。一方で、アイドルとして活動しているときの久保さんのイメージは、どちらかといえば強い言葉を発する性格ではないと思っていて。今作でも絢香の溢れる想いを見事に表現していましたが、こうした演技をされるときはどのような気持ちの作り方をしているのですか?

久保:前提としてなのですが、こういう自分と遠いところにいる役を演じることにすごく興味があります。昔からそう思っていて、自分でも知らない自分に会えることを楽しんで演じています。加えて、今作でいえば内田監督と片山監督のお二人とできることがすごく嬉しかったので、とにかく自分の殻を破るとか、「一線を超えたいな」という気持ちで固めていました。

乃木坂46 久保史緒里

ーー撮影を終えて振り返ってみてどうですか?

久保:私にとって挑戦だったので、緊張に飲まれた部分もありました。そうした悔しさもあり、「緊張してる間に終わってしまった」という気持ちも正直あります。でも、その中で内田監督には1個ずつ丁寧に教えていただいていたので、それがすごく身になりましたし、そうやって言っていただけることが本当に嬉しかったです。なので、とにかくそれに応えたいという思いで、もうがむしゃらに、置いていかれないように、とにかく食らいついていかなきゃと、本当に必死でした。

ーー教えてもらったというのは演技指導などですか?

久保:いえ、技術的なこととかではないんです。例えば1つのシーンを撮ったときに、自分の中ではどうだったか、というところです。なかなか言葉にするのは難しいのですが、不安になる気持ちとか、自分で口にできないような気持ちを全部言葉にして伝えていただきました。お芝居の面でも「こういうふうに演じてほしい」とかではなく、あくまで私が演じてる中で「もっとナチュラルに」とか、「そのとき出てた気持ちで」というような伝え方で。自分の中にちょっとでも「こうしなきゃ」とか「こうしたい」みたいな感情を乗せたときに、内田監督には全部がバレてるんです。「映画は大きいスクリーンだから、そういうの全部バレちゃうよ」という言葉もいただいて、そういう部分から教えていただきました。

久保史緒里

ーーやはり映画の演技は違うものなんですね。

久保:舞台はいかに遠くのお客様まで届けるかが重要だったのですが、映画と舞台はまた全然違いました。改めて挑戦してみて、本当に繊細なものなんだなというのを、ほぼ経験がない中で教えていただいたのはすごく大きいことでした。

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