『ラストマン』は制作者たちの予想も超えた作品に? 時代と共鳴した生々しさ

『ラストマン』は時代と共鳴した作品に

  TBS日曜劇場で放送されている『ラストマンー全盲の捜査官ー』が、ついに最終回を迎える。

 本作は、交換研修生として来日した全盲のFBI捜査官・皆実広見(福山雅治)が、捜査一課の刑事・護道心太朗(大泉洋)とともに様々な事件を解決していくバディものの刑事ドラマだ。

 全盲というハンディキャップを抱えながらも、天才的頭脳と最新のテクノロジーを駆使することで事件の謎を解明していく皆実と、並々ならぬ正義感ゆえに犯人逮捕のためなら手段を選ばない心太朗が時に反目しながら、力を合わせて事件を解決していく姿は実に痛快で、日曜劇場らしい娯楽作品に仕上がっていた。

 何よりキャッチーだったのが、皆実の人物造形だろう。皆実は『ガリレオ』(フジテレビ系)の主人公・湯川学の系譜にある福山が得意とする変わり者の天才キャラで、毎回、想像の斜め上の行動をとって周囲を翻弄するため、目が離せない。一方、心太朗を演じる大泉洋は、自由奔放な福山のボケの芝居に対してツッコミを入れるシリアスな芝居に徹することで、作品世界のリアリティを支えていた。

 皆実の突飛なキャラクターを筆頭に、アイカメラによるAI画像認識や音声アシストといった最新テクノロジーによる科学捜査の派手さが印象に残る『ラストマン』だが、劇中で描かれる犯罪はとてもリアルだ。

 脚本を担当している黒岩勉は、TBS日曜劇場では『マイファミリー』や『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』などを手掛けているが、出世作となった『僕のヤバイ妻』(フジテレビ系)を筆頭に、劇場型犯罪をスポーツの実況中継のようなライブ性のあるサスペンスとして描くことを得意としている。

 その手腕は本作でも存分に発揮されており、料理系インフルエンサーのトラブルを描いた第5話や、バスジャック事件の犯人が人質となった乗客にSNSで事件を拡散させる第8話など、SNSや投稿動画サイトを用いた現代的な事件が多数登場する。

 その筆頭が、無差別連続爆破事件を描いた第1話だろう。全盲の皆実が天才的頭脳によって、刻一刻と変わっていく状況に対応しながら犯人を追い詰めていくヒーロー性を強く印象付ける回であると同時に、皆実が対峙する犯罪者が、社会から孤立した失うものが何もない「無敵の人」であることが強調された回となっていた。あらすじだけみると荒唐無稽な話に思えるが、放送される数日前に、岸田文雄総理大臣が和歌山の漁港で選挙の応援演説をしていたところ、爆発物を投げ込まれる事件があったこともあってか、妙に生々しく感じたのを覚えている。

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