日向亘&片岡凜、『ペンディングトレイン』で感じたのは「“生きることのすごさ”」
折り返し地点を過ぎ、登場人物ひとりひとりの個性が際立ってきた金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)。 山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌ら旬の俳優がキャストに揃う中、“大人”たちとの対照的な存在として、存在感を放っているのが高校生カップルを演じる日向亘と片岡凜だ。ペンディングされた世界で少しずつ変化していく江口和真と佐藤小春を2人はそれぞれどう演じたのか。(編集部)
2人を変えた山田裕貴からのアドバイス
――まず、演じる役柄について聞かせてください。
日向亘(以下、日向):和真は、第1話で「もうこの人たちと一緒にいるのやめよう」って小春と一緒に外へ出て、そこから赤楚(衛二)さん演じる優斗の懸命な説得や、第3話の山田(裕貴)さん演じる直哉からのアシストによって、ちょっとずつ心を開いていきます。和真自身、大人を軽蔑して拒絶していたところがあったと思うのですが、第4話でそれが完全に改善できて、乗客たちにも一体感が出てくる。そこの成長は僕もすごく意識して演じさせてもらっていたので、みなさんに伝わっていればいいなと思っています。
片岡凜(以下、片岡):小春は信頼している人以外は自分の中に迎え入れない性格なので、第1話と第2話では、ずっと和真の隣にいてツンツンしてる子に見えるけど、実はすごく優しくて、愛嬌がある女の子なんです。「自分はもうこの人たちと一緒に生きるしかない」と今の状況を受け入れたところから、だんだんと小春の内面にある明るさや優しさがいろいろな人に向けられていくのが、見どころのひとつであり、キャラクターの特徴だと思っています。
――小春は“ある秘密”を抱えているんですよね。
片岡:小春の不安要素が、誰にも打ち明けられないまま彼女の中でどんどん大きくなっています。彼女のキャパがどんどん狭まっているというか、彼女なりの限界を迎えてきていて、そこはとても注目していただきたいポイントです。
――和真と小春は、“VS大人”として描かれるシーンが多い印象です。
日向:最初のほうに監督から言われたことなんですけど、「和真が先導して大人を嫌っていく」と。僕としては、小春には“素敵なご家族に恵まれて育ってきた女の子”のイメージがあるので、小春は和真の意思を尊重してくれて、和真が1人にならないように周りに気を使ってくれているんだと思っています。お互いが補い合っていて、和真の決断力に小春は頼っている部分があると思うし、小春のコミュニケーション能力に和真はすごく助けられている。2人セットではあるのですが、お互いに違った長所と短所を持っているので、そこは大事にしていきたいなと思いながらやっています。
――おふたりとも群馬県出身の19歳ということで、共通点も多いと思います。
日向:凜ちゃんと最初に会ったのは、僕の事務所の先輩の妻夫木聡さんが開催しているワークショップでした。そのときはあまり話せなかったんですけど、この作品の衣装合わせのときに再会したら、すごく落ち着いてるし、喋り方とか佇まいがすごく上品な方で。僕も勝手に意識して上品な感じでやってはいるんですけど、あまりできてないのかなと思います(笑)。僕が結構適当なところがあるので、もしかしてあまり話が合わなかったりするのかな? と思っていたんですけど、そこは凜ちゃんに助けられながら(笑)、同い年で共通の話題もたくさんあるし、仲良くお話しさせてもらってます。
片岡:最初にお会いしたときから、すごく明るくて、いろんな方に優しく接することができる方だなと思っていました。実際に現場でご一緒させていただいても、やっぱり周囲を巻き込むコミュニケーション能力があって、本当に“陽の方だな”っていう印象が強いです。ムードメーカーというか、現場が和むような存在なので、みなさん楽しくお仕事できているのかなと思います。
――現場で印象に残った出来事があれば教えてください。
日向:第1話のラストで和真と小春が外へ出ていくときに、大人に対してズバッと言うんですけど、そのシーンは山田さんがいろいろアドバイスしてくださいました。段取りの段階では、僕の中に“淡々と静かに刺していく”イメージがあったんですけど、「和真が冷静でクールなところは前半で描けていると思うから、ここはズバッと感情的になっちゃっていいんじゃないかな」と言っていただいて、たしかにふだん冷静な人が感情的になったら余計に響くだろうなと。僕もすごく不安なシーンではあったので、段取りを重ねる中で「どうですかね?」とお聞きして、「いいと思うよ」とか「もうちょっとこうしてみたら面白いんじゃない?」とかアドバイスいただいて、それを軸に僕なりに表現したいことをいろいろ足させてもらったので、印象に残っています。
――片岡さんも、先輩からの言葉で印象的なものはありましたか?
片岡:私がメインで映るシーンの撮影前に、小春の気持ちを考えていたんですけど、ちょっと難しい部分があって。「どう見せようかな」とひとりですごく考えていたら、ちょうど休憩中の山田さんが近くに座っていらっしゃって、他のキャストの方に「本物になればいいんだよ」とさりげなく言っているのを聞いて、「これだ!」と思って。実際に私がいただいた言葉ではないんですけど、その言葉を聞いたときに余計な考えが全部なくなって、直感でやってみようと思うことができました。
――山田さんのお芝居を間近でご覧になって、いかがですか?
日向:僕は、山田さんの人間味のある泥臭いお芝居がすごく好きで。セリフとして書かれているものを言うのがお芝居なので、僕の場合はどうしても「ちょっと今セリフっぽかったな」って思うところがあるんですけど、山田さんの一言一言は、しっかり自分の中で咀嚼して、本当に役が喋っているみたいな芝居をされる。それを見て、勝手に“同じようにできたら”と意識させてもらっています。
片岡:本当に現場でお会いするたびに、そして山田さんのお芝居を拝見するたびに、内から出る迫力というか、熱って言うんですかね。すごく熱いものを毎回感じています。表面には見えないけど、直哉の強さと脆さが垣間見えたり。ちょっとした自己犠牲がありながらも、それを慣れでうまくカバーして、人に悟られないようにしているとか、山田さんのお芝居からいろいろなものを想像させられます。お芝居って正解がないので、山田さんのお芝居の幅の広さから学ぶことはものすごく多いですね。