新興宗教、クレーマー、嫌味なご近所 『波紋』は“人間の嫌なもの全部乗せ”映画だ
本作で描かれている“嫌なもの”が極めて特殊なケースであったり、登場人物特有の事象だったりするならば、ただ笑って観ていられる。しかしここで描かれているのは人間社会でありふれた出来事であるし、それらが再生産される=息苦しい世の中が続いていくことを見せつけられると、なんとも顔が引きつってしまう。ブラックコメディとして、とても秀逸な映画だ。
1人1人が発した言葉や主張が波紋のように周囲の人々に届き、刺激を与える。すると受け取った人も反応して、さらに大きな波紋として跳ね返す。依子も新興宗教の先生から買った“貴重な水”で自分を落ち着かせようとしていたけれど、筆者も瞑想にハマった経験があり、そこでは「周りの物事にいちいち反応するのがいけない」と教わった。それなりに納得していたし、そう心がけて生きてきたけれど、今はもうそれが正しいのかわからない。信じていた世界をぐわんぐわんと揺さぶられてしまった。
■公開情報
『波紋』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:筒井真理子、光石研、磯村勇斗、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、津田絵理奈、花王おさむ、柄本明、木野花、キムラ緑子
監督・脚本:荻上直子
製作幹事・制作プロダクション:テレビマンユニオン
制作協力:キリシマ 1945
配給:ショウゲート
©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
公式サイト:hamon-movie.com
公式Twitter:@hamon_film