光石研だけ別路線? 田口トモロヲ、松重豊ら『バイプレイヤーズ』俳優の若き頃を振り返る

『バイプレイヤーズ』俳優の若き頃を振り返る

 「バイプレイヤー」とは、ドラマや映画などで脇役を演じる俳優のことを表現する言葉であり、とりわけ出番が少ない中でも強烈な存在感を残すだけの個性を持つ俳優であったり、多くの作品で脇役を演じ、そのイメージが強い俳優がそう呼ばれている。単純に「脇役」という言葉だけでは「主役」と対角として、どこか目立たない印象を持たれがちではあるが、それを払拭したのは間違いなく『バイプレイヤーズ』シリーズであり、同作で “バイプレイヤーズ”と呼ばれる生粋のバイプレイヤーたちにほかならない。

 田口トモロヲと松重豊と遠藤憲一と光石研。そしてシーズン1のみの登場だった寺島進と、彼らのリーダー的存在でシーズン2の撮影途中でこの世を去った名優・大杉漣。90年代以降で映画やドラマを1作品でも観たことがあれば、必ずと言っていいほど彼らのうち誰かの演技を見たことがあると言っても過言ではないだろう。いわゆる主演級のスター俳優とはどこか異なる泥臭い魅力を滲みだす彼らは、20年ぐらい前まではVシネマのヤクザ映画などでギラギラした雰囲気の役柄を多く演じていた。それから10年ほど経ち、この『バイプレイヤーズ』に至る頃には、まさに“歳をとって丸くなる”という言葉を体現するかのように、すっかりと人の良さそうなおじさんキャラを確立していき、主演級から作品に欠かすことのできない助演級の役柄まで得るようになる。年齢は演技において何のハンデでもないのだと、証明してくれるかのようだ。

 彼らの若い頃のキャリアを振り返ってみると、そのバイプレイヤーとしての源流が見えてくるかもしれない。例えば大杉は、周防正行の伝説的なピンク映画『変態家族 兄貴の嫁さん』に代表されるように、80年代の傑作ピンク映画でその名を轟かせた俳優だった。田口もまた下積み時代にはピンク映画の端役などを経験し、みるみるうちに一般映画に進出していく。またピンク映画同様、古くから若手の個性派俳優を輩出する大きな役割を果たしていたのが舞台演劇の世界であり、遠藤憲一は仲代達矢主宰の無名塾から、松重豊は三谷幸喜主宰の東京サンシャインボーイズから俳優としての道をスタートさせる。

 そんな彼らを一躍“名バイプレイヤー”の道へと導いたのは、その個性を見出し引き出すことに長けた強い作家性を持つ監督たちであろう。1991年に公開された黒沢清の『地獄の警備員』で松重豊は狂気的な役柄を演じ、同作にも出演していた大杉は北野武の『ソナチネ』で暴力団の幹部を演じる。同じ組の構成員にはオフィス北野に所属していた寺島がおり、寺島も出演していた北野武の初監督作『その男、凶暴につき』では遠藤が麻薬の売人役として登場。ほぼ同じ時期には田口が塚本晋也の『鉄男』でこの上ないインパクトを放つのである。

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