パク・ジニョンが進化した演技力を披露 『聖なる復讐者』は“力のない被害者”に光を当てる

『聖なる復讐者』パク・ジニョンが圧巻の熱演

 イルミネーションが光る街、浮かれモードの音楽、ケーキを囲む家族に大きなプレゼントを持った両親。誰もが笑顔になるはずのクリスマスの朝、マンションの屋上にある貯水槽で発見されたのは、ある少年の死体だったーー。

 5月12日公開の『聖なる復讐者』は、『美しき野獣』(2005年)を手掛けたサスペンス映画の名手キム・ソンス監督がメガホンを取り、人気スターのパク・ジニョン(GOT7)が新境地を開いた注目作だ。

 逃亡した両親の借金返済に追われ、知的障がいのある双子の弟ウォル(パク・ジニョン)と祖母を養うために立ち退かせ屋で稼ぐ双子の兄イル(パク・ジニョン)。死体で発見されたウォルには残忍な暴力の痕跡があったにもかかわらず、事故死と片付けられてしまう。不審に思ったイルが調べてみると、ウォルのバイト先だったコンビニの監視カメラに不良グループに絡まれる姿が。ウォルに続いて祖母も亡くなり、天涯孤独になったイルは真犯人を探し出し復讐するため、不良グループを追って自ら少年院に入る。

 パク・ジニョンといえば、『花様年華〜君といた季節〜』(2020年)では観るものすべてを引き込む“初恋の人”、『ユミの細胞たち2』(2022年)では優しくて誠実で、愛情表現豊かな“理想の彼氏”としてシンドロームを巻き起こした。だが、本作で見せる表情には、甘さや爽やかさはない。坊主頭で常に相手を罵り殺気立っているイルは、パク・ジニョンだとわかっていても目を疑うほどの気迫がある。心優しいウォルは天使のような笑顔を浮かべているが、どことなく寂しさが漂う。いつも怒っているのにどこか悲しいイルと、いつも笑っているのにどこか悲しいウォル。全く別の人物を演じながらも、心の奥にある苦しみを訴えてくる眼差しが同じで、余計に胸を締めつけてくるのだ。

 演技もできるアイドルを指す“演技ドル”という言葉があるが、彼には当てはまらないだろう。大きな挑戦となった今回の役で十分な実力を発揮したパク・ジニョンは、俳優としても地位を確立しているからだ。その証拠に、先日開催された韓国のゴールデングローブ賞とも呼ばれる第59回百想芸術大賞では、映画部門の男性新人賞を受賞。TikTok人気賞とあわせて2冠を達成し、演技力とともに人気の高さを証明した。授賞式では、「ここからが始まりで、これからもずっと演技をしていきたい」とコメント。入隊前の作品となった本作で進化した姿を披露したパク・ジニョンは、カムバックを大いに期待したい俳優として爪痕を残した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる