『わたしのお嫁くん』高杉真宙の“過剰”が意味するものは? 嫁夫の反転がもたらす気づき

『わたしのお嫁くん』高杉真宙の献身のつらさ

「山本くんがお嫁に来てくれたらいいのに」

 速見穂香(波瑠)がふとこぼした一言から始まった山本知博(高杉真宙)の“嫁入りシュミレーション”、もとい1週間の“お試しルームシェア”の様子が描かれた『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)第2話。

 「俺が嫁に来たからには」と穂香の睡眠の質向上に食生活改善、QOL爆上げのために甲斐甲斐しく至れり尽くせりの山本。しかし、何やら穂香と親しげな福岡支社のトップ営業マン・古賀一織(中村蒼)が東京本社に異動してきたこともあり、山本はより一層この嫁業に勤しみ、過剰なほどにエスカレートしていく。お弁当はお節のように豪華になり、穂香の好物の味噌汁を作るために早朝からかつお節を削り始める。

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職場では仕事のできる先輩と彼女を尊敬する後輩、家では“ズボラ女子”と“家事力最強男子”という速見穂香(波瑠)と山本知博(高杉真宙…

 彼自身は「俺、嫁なんで」「やりたくてやっているだけ」と言い張るも、その献身的すぎる姿は彼自身の無意識の“自己犠牲”をあまりにも伴いすぎている。そして「嫁たるもの」という固定観念に縛られすぎており、自分のことを尽く後回しにしてしまう。毎日が記念日かと思うような家事の域を超えた“おもてなし”の裏で山本は仕事のパフォーマンスにも影響が出始める。さらに穂香も常にもたらされる“健康的で規則正しい生活”に少し窮屈さを覚え始める。夜食にジャンクフードを食べたいのに「お腹が空いているなら僕が何か作ります」と言われてしまうつらさ。そうじゃなくって、今ジャンクフードを食べたいだけなのに。“手抜き”を楽しみ、愛で、存分に自分自身を甘やかしたい日だってあるのに。

 そこで次に待ち受けていたのが山本の“お母さん化現象”だ。あまりに既視感のある展開が、男女が入れ替わるだけでこうも新鮮味を帯びるのか。自分だけが舞い上がり、良かれと思ってあれこれ手を焼いていたことに気がつき、虚しさを滲ませる山本の姿がいたたまれない。この“嫁入りシュミレーションのその先”を見据えていたのは自分だけであることを思い知らされ、期待してしまった自分の思い上がりを恥じる。誰に頼まれたわけでもないからこそ自身の言い分を飲み込むしかない、そんな山本の意気消沈ぶりがリアルだった。

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