『THE FIRST SLAM DUNK』井上雄彦の絵をいかに3DCGで再現? CG担当が明かす制作過程

 2022年12月に公開され、大ヒットを記録している『THE FIRST SLAM DUNK』。その臨場感あるバスケットボールの試合描写は、観る人に驚きと感動を与え続けている。

 本作は、3DCGを駆使して本格的なバスケットボールの試合を描写したことが称賛されている。リアルな動きながら原作の雰囲気を見事に再現したCGはどのように作られたのか、本作のCGディレクターを務めた中沢大樹に話を聞いた。

井上雄彦監督の絵とCGの相性

中沢大樹

ーー中沢さんが本作のCGディレクターとして打診された時、どのように感じられましたか?

中沢大樹(以下、中沢):最初に声をかけてもらった時は「スポーツ何やってた?」みたいな聞かれ方でした。それで、「中学でバレーボール、高校でテニスです」と答えると、「ああ……」みたいな反応をされつつ(苦笑)、「こういう作品があるんだけど」と切り出されたんです。『SLAM DUNK』は偉大な作品ですので、やりがいはあるだろうと思いました。一方でプレッシャーも大きかったので、最初は受けるかどうか悩みました。

ーー大きなプレッシャーというのは、やはりビッグタイトルであることに加えて、CGアニメーションとして大きなチャレンジになりそうだと感じたのでしょうか。

中沢:それもありましたが、この作品はCGじゃないとできないだろうとも思いました。『SLAM DUNK』の映画をいま作るなら、バスケットボールの試合をリアルに再現しないと意味がないでしょうから。

ーー中沢さんは、『プリキュア』シリーズや『ポッピンQ』など、ダンスシーンのCGを数多く手掛けてきたと思います。それらの経験は、今回の『THE FIRST SLAM DUNK』のスポーツ描写にどう活かされたのでしょうか。

中沢:スポーツという点では、これまでとは異なるチャレンジになりました。ただ、『プリキュア』などで手掛けたダンスシーンで、フルフレームで動くCGをアニメルックにするということをやってきたので、身体的な動きをCGで表現しつつキャラクターに落とし込むという点は、これまでの経験も活かされています。

ーー本作は井上雄彦監督の絵を再現することが重要だったと思います。井上監督の絵はCGで表現しやすいタイプの絵ですか?

中沢:2Dの絵を立体の3Dに起こすのは、基本的に難しいことです。しかし、井上監督の絵は立体造形を正確に2Dに落とし込んでいるので、CGで表現すべき絵だろうと思いました。

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モーションキャプチャの難しかった点

ーー本作のCG制作にモーションキャプチャを使用していることはすでによく知られています。その収録データは、実際にどの程度完成映像に活かされているのでしょうか。

中沢:モーションキャプチャのデータはベースの動きであって、その上から調整していくものです。ほとんどゼロから動きをつけている部分もありますが、ベースとしては基本的にキャプチャのデータが存在しています。あくまでプレーでは自然にこういう動きをしますというもので、例えば、ディフェンス時の構えやポジションなどですね。モーションキャプチャのデータを収録する時に難しかったのは、個々のキャラクターの動きを反映させることでした。今回、モーションアクターをプロのプレイヤーにお願いしていますが、マンガのキャラクター性を反映させた動きでバスケットのプレーをしてもらうのが難しくて。例えば、三井の3Pシュートのフォームは、アクターさんのボールを上げる位置が違っていたりしたので、それを収録期間中に自主的に直していただいたりなど、アクターさんにもたくさん調整してもらいました。

ーープロのプレイヤーの方々それぞれに自身の癖があるわけですね。そこはアニメーションにする時、キャラクターの動きに修正していくと。

中沢:そうですね。監督とも確認しまして、基本的にはキャプチャ収録時アクターさんには自然にプレーすることを意識してもらい、キャラクター性はアニメーション時に反映させるということにしていました。アクターさんがマンガの再現やキャラクターなりの動きを意識しすぎてプレーが不自然にならないためです。でも、アクターさんの素の部分が活かされている部分もあります。

ーー誰の動きが一番難しかったのでしょうか。やはりトリッキーな動きの多い桜木ですか?

中沢:桜木については、モーションキャプチャとは別の部分で難しかったです。この映画はアニメとしては、かなりリアルな動きをする作品ですが、その中において桜木は“誇張”を求められるキャラクターなので、コミカルさとリアリティのバランスをとるのが難しかったです。

ーーそれと、モーションキャプチャで撮れるのは人体の動きまでですから、シャツの動きは別に作る必要がありますよね。

中沢:シャツの動きは、クロスシミュレーション(※衣服、旗などの動きを物理的にシミュレートする技術)という技術を使っています。平たいユニフォームのモデルを作成し、シミュレーションをかけて動かしています。自分が合流する前からクロスシミュレーションを採用することは決まっていました。試合のシーンはほぼ全カットに渡り、この技術を用いることになるので、プロジェクト成功のために重要なポイントでした。井上監督の絵ではユニフォームにシャープな線が入っていると思いますが、こういう線をクロスシミュレーションで作るのは、かなり難しいと思っていたんですね。ですので、テストで監督からOKが出た時はホッとしました。クロスシミュレーションがダメだったら、モデルでシワを作ったユニフォームを用意して、シワを変化させていくみたいな、絵としては成立するけど、動きとしては自然になりにくいものになっていた可能性もありました。

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