『舞いあがれ!』赤楚衛二が体現した幸せだからこその苦悩 貴司は新しい自分を求めパリへ

『舞いあがれ!』貴司は新しい自分を求め旅へ

 『舞いあがれ!』(NHK総合)で久留美を演じる山下美月が自身のInstagramでストーリーズにて投稿していた文章を見てハッとした。それは3月23日放送の第120話が、舞(福原遥)、貴司(赤楚衛二)、久留美の幼なじみ3人が劇中で集まる最後の日だったということで、3人が仲良く“舞いあがれポーズ”をしている公式アカウントの投稿を引用し、「もうみんな30代ですからね……」と綴っているものだ。

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

朝ドラ「舞いあがれ!」10/3放送開始(@asadora_bk_nhk)がシェアした投稿

 明示されている年月から現在の3人の年齢を逆算することは野暮なのでやめておくが、舞が「こんねくと」を起業し、刈谷(高杉真宙)の「株式会社ABIKILU(アビキル)」と業務提携、そこから舞自身も「誰でも気軽に空を行き来できる未来」を目指していくのは少なくとも30代半ば。久留美もさらなるキャリアアップとして、東大阪を離れ長崎でフライトナースとしてドクターヘリに乗る段階へと達しようとしている。子供の頃に抱いていた空への憧れ、夢の果てに見えてきたさらなる山の頂上。それぞれ形は違えど、叶うわけがないと諦めながら、それでも夢を掴もうとする姿は、山下がセンターの一人を務める乃木坂46の32ndシングル「人は夢を二度見る」のメッセージそのものでもある。

 舞や久留美が夢に向かってもう一度離陸していく一方で、貴司は歌人として短歌を詠むことが苦しくなってしまっていた。リュー北條(川島潤哉)や史子(八木莉可子)の後押しもあり、舞への気持ちを抱きしめながら相聞歌を詠むことができたあの頃とは違い、今の貴司には舞と歩(安井姫壱)という幸せが目の前にある。それで十分。しんどい。離れたい。

 舞や祥子(高畑淳子)が寄り添うことでしか貴司を支えることができなかったように、ゼロからイチを生み出す創作の苦しみは貴司本人、もしくは詩人の八木(又吉直樹)や史子のような同じ歌人でしか理解することは難しいのかもしれない。歌人の江戸雪は『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 舞いあがれ!Part2』で、「短歌を作ることは、自分自身を見つめ、新しい自分を発見することにつながります。書き上げた短歌を読んで、自分はこんなことを考える人間だったのかと驚かされることは、私自身もあります」と語っている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる