『どうする家康』有村架純が多彩な表情で見せた瀬名の複雑な胸中 北香那の強い眼差しも

『どうする家康』お葉×美代の結末

 『どうする家康』(NHK総合)第10回「側室をどうする!」。瀬名(有村架純)は岡崎城近くの築山に民の声を聞くための庵を開いた。ある日、於大(松嶋菜々子)が家康(松本潤)と瀬名に子が少ないことを心配する。瀬名は於大の言い草に立腹するが、側室を迎えるようにという主張を聞くと、自らも側室選びに関わりたいと申し出る。

 第10回では、瀬名を演じている有村の表情や佇まいから、側室選びに積極的に関わりながらも胸中複雑なさまが感じとれた。

 物語冒頭の於大と瀬名のやりとりはコミカルに映った。瀬名の心情を考えると申し訳ないが、瀬名が顔をしかめようと傷つこうと、於大がずけずけと物を言い続けるのはおもしろおかしく映る。だが、於大が家康に「殿はもはやただの国衆ではありませんよ。三河一国を束ねるお立場」と主張するのを聞き、瀬名は何かを思い止まる。「側室選びはこの瀬名にもやらせてくださいませ」と申し出るまでの、思い悩む面持ち、意を決した顔つきには、自分の本心を抑え、家康のあるべき姿のために役目を果たす気概が感じられた。とはいえ、やはり家康から遠ざけたい女性というのははっきりしているらしく、側室に立候補した女子(清水あいり)に家康が目移りしかけたときには、うつむきながらもピシャリと「なりませぬ」と制していた。

 側室選びの中、瀬名が見初めたのはお葉(北香那)という侍女だった。お葉は側室となることを思い惑うが、瀬名はお葉の目をまっすぐ見つめ、「殿の側室になっておくれ。そなたじゃなきゃ嫌なんじゃ!」と思いを告げる。「お願い!」と頭を下げる姿には迷いがなかった。お葉の心を動かしたのは瀬名の実直さのはずだ。

 瀬名が自分の気持ちに正直な人物であるからこそ、ところどころで見え隠れする本心が切ない。お葉に瀬名が指南する場面では、於大がえずくこともあって面白いのだが、お葉を家康のもとへと送り出す直前、視線を落とし、その口元が無理に笑って見えるような瞬間があった。お葉の子どもを皆で囲む場面でも、子どもの健やかな寝顔を愛おしそうに見つめつつも、家康が子どもに夢中になるのを見て、どこか寂しそうだった。お葉の話ばかりする家康に「すみませんでしたね」と呟いたり、お葉を頻繁に招きたがる家康に「近頃多うございませぬか?」とやんわり釘を刺したりする瀬名には、苛立ちややるせなさに似た感情があったのではないだろうか。

 お葉が側室のつとめから離れたとき、瀬名は「残念でございましたなあ、殿。あのようなおなごはもうおらぬでしょうに」と残念がる言葉を発しつつも、その声色は明るい。「ああ、残念!」という声の軽やかさに本心があらわになっており、かわいらしくもあった。

 有村が見せた瀬名の正直さも魅力的だったが、お葉と美代(中村守里)のお互いを思う誠実な眼差しも魅力的だった。

 お葉は物語冒頭から美代を気にかけていた。渡辺守綱(木村昴)に絡まれていた美代を助け出したときも、足元がふらついた美代をそっと支えたときも、美代を見つめるお葉に目はとても優しかった。家康からは不気味で怖いと言われてしまうが、お葉を演じている北の目元の表情や声の調子、さりげない所作からは、お葉の気立てのよさが十分伝わってきた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる