『Winny』は“今の社会を作り上げた人物”を映す 情報リテラシーの高さが測られる一作に

『Winny』は今の社会を作った人物を映す

 ちなみに、音楽の違法アップロードが蔓延した状態を逆手にとったのがスウェーデン企業のサービス・Spotifyであり、Spotifyの登場が音楽のサブスク配信の流れを後押しした。(※2)Winny製作者の意見を全く聞かずにとりあえず逮捕・起訴を進めた日本のことを思うと、ソフトウェア開発の分野でなぜ他国に遅れをとっているのかがよく分かるだろう。

 本稿で取り上げたたった1つの事例をみるだけでも、Winny事件を扱う映画が持つ意義は十分伝わるのではないだろうか。本作を観て何を思うかは、きっと視聴者の情報リテラシーの高さによって変わる。ただし、改めて思い出したいのは、Winnyを作れるほどの天才エンジニアを罪人に仕立て上げたのは、ITのことを何も知らない無垢な一般人だった。新時代を作るのは決して技術者だけではなく、私たち一般市民も大いに関係している。そのことが身にしみて理解できる作品だ。

参照

※1. 『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』(早川書房)
※2. 『Spotify: 新しいコンテンツ王国の誕生』(ダイヤモンド社)

■公開情報
『Winny』
TOHOシネマズほか全国公開
出演:東出昌大、三浦貴大、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、阿部進之介、渋川清彦、田村泰二郎、渡辺いっけい、吉田羊、吹越満、吉岡秀隆
企画:古橋智史、and pictures
原案:朝日新聞2020年3月8日記事/記者:渡辺淳基
プロデューサー:伊藤主税、藤井宏二、金山
監督・脚本:松本優作
撮影監督・脚本:岸建太朗
制作プロダクション:Libertas
制作協力:and pictures
配給:KDDI/ナカチカ
©2023 映画「Winny」製作委員会
公式サイト:winny-movie.com
公式Instagram:winny_movie
公式Twitter:@winny_movie

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