『THE FIRST SLAM DUNK』の偉業は語り継がれ続ける 井上雄彦が監督・脚本を務めた意義
今回の映画が大ヒットした背景に、原作やテレビアニメの予備知識がない人々が観ても楽しめるような作り方になっているのが大きい。白熱した試合を中心に、その中の一人であるリョータにスポットを当てることで、試合の進行に手に汗握りつつ、リョータに観客の気持ちが仮託できるドラマ作りが上手い。スポーツものの映画は、観客がスクリーンの中の試合にいかに自分も入り込めるかが重要なポイントだが、その点も演出、映像ともに非常に優れている。原作漫画や90年代のテレビアニメ版を知らない人でも試合の行方とリョータの心情、双方のドラマに没入できる構成が素晴らしいのだ。試合を見守っているうちにチームの大黒柱、3年生のゴリこと赤木をはじめとした湘北バスケ部の面々にも興味が湧き、この試合に至るまでの彼らにどんなエピソードが設けられていたのか、原作を読んでみたい気にさせてしまう匙加減も憎いばかりだ。
テレビアニメ版にあった(原作準拠の)分かりやすいギャグ描写は『THE FIRST SLAM DUNK』でほとんどなくなっている。もともと『SLAM DUNK』がヒットしたのは、巧みなバスケット描写はもちろん、ギャグと熱血と青春がバランスよく盛り付けられた内容が読者に受けたからで、そこを忠実に映像化したテレビアニメ版を好む人が今なお多いのも当然のことだ。原作やアニメにあった描写が『THE FIRST SLAM DUNK』で削られていることに対しての否定的な声もあったが、『THE FIRST SLAM DUNK』は『THE FIRST SLAM DUNK』の、テレビアニメはテレビアニメなりの長所があるので、どちらの方が良いといった優劣の差はない。テレビアニメを観て育った世代が味わうために、うってつけの調理をしたのが原作者自身だったということなのだ。
『THE FIRST SLAM DUNK』は、『すずめの戸締まり』や『ONE PIECE FILM RED』などの興行収入100億円超えの作品と並んで、第46回日本アカデミー賞の優秀アニメーション作品賞を受賞している(授賞式は2023年3月10日)。最優秀作品賞がどのアニメ映画になろうとも、映画公開前に寄せられていた数々の批判の声を記録的大ヒットの成績と内容でひっくり返した本作の偉業は、長く語り続けられることだろう。
参照
※ http://www.kogyotsushin.com/archives/topics/t8/202301/23153909.php
■公開情報
『THE FIRST SLAM DUNK』
全国公開中
原作・脚本・監督:井上雄彦
演出:宮原直樹、北田勝彦、大橋聡雄、元田康弘、菅沼芙実彦、鎌谷悠
キャラクターデザイン:井上雄彦、江原康之
CG ディレクター:中沢大樹
作画監督:江原康之
サブキャラクターデザイン:番由紀子
モデルSV:吉國圭、BG
プロップSV:佐藤裕記、R&D
リグSV:西谷浩人
アニメーションSV:松井一樹
エフェクトSV:松浦太郎
ショットSV:木全俊明
美術監督:小倉一男
美術設定:須江信人
色彩設計:古性史織
撮影監督:中村俊介
編集:瀧田隆一
音響演出:笠松広司
録音:名倉靖
キャスティングプロデューサー:杉山好美
音楽プロデューサー:小池隆太
2Dプロデューサー:毛利健太郎
CGプロデューサー:小倉裕太
アニメーションプロデューサー:西川和宏
プロデューサー:松井俊之
声:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太
オープニング主題歌:The Birthday(UNIVERSAL SIGMA)
エンディング主題歌:10-FEET(EMI Records)
音楽:武部聡志、TAKUMA(10-FEET)
アニメーション制作:東映アニメーション、ダンデライオンアニメーションスタジオ
配給:東映
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