『星降る夜に』吉高由里子が世間の“決めつけ”に問う 北村匠海の告白で距離は縮まるか

『星降る夜に』吉高由里子が決めつけに問う

 娘に迷惑をかけまいと遺品整理をして亡くなった母親。「ひとり寂しく旅立った」と悲しんだ産婦人科医の鈴(吉高由里子)に、「そう決めつけるのは違うんじゃないでしょうか」と言ったのは遺品整理士の一星(北村匠海)だった。

 確かに死を迎える瞬間はひとりだったかもしれない。しかし、その人が遺した品々から充実した人生を送っていたのではないかと思いを馳せる。そんなふうにフラットに人の死を見つめている一星でさえも、ときに他者の幸せ・不幸せについて決めつけそうになる瞬間がある。ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)第2話では、匿名出産というシビアな現実が描かれた。

 自分の身元を明かさない妊婦が、マロニエ産婦人科医院に飛び込んできた。健診にも行かず、母子手帳の取得もしていなかった彼女は、無事に出産することができたものの、「子どもなんていらない」と言い放つ。その様子に看護師や新人医師の深夜(ディーン・フジオカ)は「赤ちゃんがかわいそうだ」と心を痛めるのだった。

 なかでも深夜は、赤ちゃんの写真を見せたり、会ってみないかと熱心に誘ったり、なんとか愛情を持ってもらおうとする。だが、彼女の気持ちに変化はなくむしろ逆鱗に触れる結果に。また、彼女はそのまま誰にも行き先を告げずに病院を抜け出してしまうのだった。

 その話を鈴から聞いた一星も「なんだそれ。その逃げた母親、探そうよ」と腰を上げる。かつて高校生のころに両親を事故で亡くした一星は「生まれたときから親がいないなんてかわいそう」と考えてのことだった。

 だが、鈴にはそんな周囲の対応に引っかかりを覚えていた。「ずっと気になってた、みんなが赤ちゃんを“かわいそう、かわいそう”って言うのが」と。その「かわいそう」という言葉が、まるで「幸せになれない」と言っているように聞こえたのかもしれない。そして「まだ2日しか生きてないのに“かわいそうだ”とか“不幸だ”とか決めつけられるのは……なんか、おかしい気がする。親がいなければ必ず“かわいそう”なの?」と続けた。

 この言葉に一星は「俺も、かわいそうじゃない?」と聞き返す。音のない世界に生き、両親を早くに亡くしたという一星の情報だけを切り取れば、「かわいそうだ」と言う人もいるだろう。でも、鈴から見た一星は少々強引で「普通」とは違うところもあるかもしれないが、世界中に友達を持ち、仕事に誇りを感じながら、自由に活き活きと自分の人生を謳歌しているように見える。そんな一星の生き様を知った今、彼に「かわいそう」という言葉があまりにも不釣り合いのように思えたのだった。

 もちろん、避けられない悲しみや苦難に直面した人に同情する気持ちはとても大切だ。その寄り添う気持ちが、その人の生きる気力につながる。だが、やたらと「かわいそうだ」と言葉を投げかけるのは、一種の呪いのようにその人に「自分はかわいそうなんだ」という心の影を落とすことになるかもしれない。

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